apothéose@虎ノ門ヒルズ

apothéose@虎ノ門ヒルズ

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グルメ
Published
April 12, 2025
半年以上に渡る仕事のアレコレが片付いたやらなんやらその他諸々のお祝いで、気になっていたapotheoseへ。場所は虎ノ門ヒルズステーションタワー最上階の49階。エレベーターを死ぬほど乗り継ぐ必要があるため、初見では辿り着けないとネットで評判。自分は慣れてるので余裕…と思っていたら、KEI Collection Parisへのエレベーターに乗りかけてしまい恥をかく。49階へのエレベーターがまさか2つあるとは思わないじゃん?(言い訳)
 
早めの時間に49階につくと、待ち構えていたスタッフに屋上プールに案内される。プールを見せれば喜ぶミーハーな客だと思われているのでは、と少しばかりひねくれた感情を抱えつつ、しかしプールと屋上からの風景をしっかり楽しむミーハー。
その後のガウディ風の自動扉の演出も楽しく見させてもらって席へと移動。
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apotheoseは昨年秋に発表された「ミシュランガイド東京2025」で1ツ星を獲得。北村啓太シェフはNARISAWAでの経験を経てフランスへ渡り、フランスでも1つ星を獲得した後に同チームを率いてここ虎ノ門ヒルズのapotheoseへの凱旋帰国という運びになったのだとか。お隣のKei Collectionも然り、本場フランスでの経験を積んだシェフが日本に戻ってきてくれるのはありがたい限り。というか、虎ノ門ヒルズが地下から49階までレストラン事情が最強すぎるなあ。
 
今年の4月からコースは一品のみとのこと。アルコールペアリングは3種類ほど。ブルゴーニュ縛りもあるが、今回はTravel Pairingをチョイス。1杯目はシャンパンを別途オーダー。
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さてさてシャンパンで乾杯。Mignon-Boulardのピノ・ムニエ。
なんというか直近が大分仕事が大変であり非人間的な生活に近かったわけだが、期待通りの芳香とクオリティのシャンパン飲んだら、文化的な生活に戻ってきたな…と感慨深くなってしまった。
アミューズは味噌クレープ、ビーツのシュー、じゃがいものタルト。タイトルは「旅の始まり」。アミューズもどれもとても良い。コース料理の期待値はだいたい最初のシャンパンとアミューズで分かると主張しているのだが、もうこの時点で勝ち確という印象。
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"1911 Sous les Pavés, le Terroir" とは「1911年」「石畳の下にあるもの、それはテロワール(大地)」という意味で、土地へのオマージュを込めたネーミング
"1911 Sous les Pavés, le Terroir" とは「1911年」「石畳の下にあるもの、それはテロワール(大地)」という意味で、土地へのオマージュを込めたネーミング
 
外はいい感じにブルーアワー。空の青とオレンジの照明のグラデーションが良いね。こういう場所に来る時は、風景の移り変わりを楽しむため入店時刻を日没前にするのがオススメ。
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お次は「春の訪れ」とのことで、菜の花と蕾菜(つぼみな)のスープ。ペアリングはニュージーランドの名門ワイナリー「Kumeu River」が手がける ピノ・グリ2022年ヴィンテージ。
いやあ、良い。良いのだが、久々の美食がただただ幸福だからか、良さをあまり言語化できない。まあそんなこともある。とりあえず、菜の花の春の苦みをピノグリの濃さで包みつつ華やかに広げる感じの世界観が良い。
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お次は「パリの思い出」とのことで、平目とウドとトマトのカルパッチョ的なものにトマトの酸味のソース。何でもシェフがパリでよく作っていたそうな。ペアリングのお酒は京都の日本酒が登場。
トマトに日本酒を合わせるのはなかなかチャレンジングな気がしたが、トマトのすっきりとした酸味と透明感のある日本酒が意外とあってる。意外と合ってるが、とはいえ何ともという気持ちも。トマトの酸味を生かすペアリングはなかなか難しいね。
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お次は「白い旨み」ということで、ホワイトアスパラと地蛤。そしてここでキャビアも登場。キャビアは冒頭に追加オーダーするか聞かれた。キャビアハラスメントは好きじゃないなあなんて思いつつ、まあ全幅の信頼をおいて追加オーダー。
いやあ美味い。しかしキャビアがないとやや物足りなさもあるかも。キャビアは美味しいけど、この盛り盛りのワンスプーンで1人5000円とかなんだろなあ、と思っていたら会計で本当に5000円だった。ピッタリ賞。
ペアリングはWabi-Sabi Tableside Whiteという酸っぱいワビサビワイン。日本ワインではなくオーストラリアのもの。こちらも春の感じがあって良い。
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外はもう真っ暗。夜景が綺麗である。周囲は30代〜50代のカップルから、インスタグラマー女子二人やら、アジア系海外男性二人やら色々。
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お次は「赤い武将」。伊勢海老、モリーユ茸、グリーンアスパラガス。ペアリングは南アフリカのシュナンブラン「Mullineux Old Vines White」。
料理はどれも美味しかったが、一番ストレートに食べる手が止まらなかったのはこれかもしれない。伊勢海老は実に美味しい。モリーユ茸も申し分ない。
フレンチのコースで海老と言えばオマール海老のポワレ、アメリケーヌソース仕立てが定石だが、伊勢海老の方が繊細で奥ゆかしく、柔らかな味わいがあった。ペアリングもまた同じく、ムルソーのリッチでクリーミーなシャルドネを合わせるというテンプレ路線から少しズラした、伊勢海老の繊細さを邪魔しない、しかし華やかな果実感と適度な酸味ミネラル感を付け加える世界観。フレンチでありながら日本の風土を感じる一皿に、南アフリカという遠く離れた土地へ想像力を旅立たせるような一杯。令和のフレンチの一つの理想形という印象。
 
ソムリエと雑談したところ、シュナンブランが有名なロワール出身なので、シュナンブランを褒められるのは嬉しいという話をした。なにやらソースに隠し味で白トリュフをいれおり、その苦味とシュナンブランが合う、メニューそれぞれに隠し味がありそれにペアリングで合わせているらしい。ワインの解像度はかなりあがったが、食の解像度が低いのでそういうところにあまり気付けていないなあ。
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お次はバローロ。海老亭別館でバローロを飲んで以来、バローロは好きなワインの一つなのだが、出てきたボトルのエチケットに見覚えがなく、これがバローロ…?と訝しんでいたら、バローロとは村であり、作り手がいくつもあることをここで知る。お恥ずかしながら「バローロ=Oddero」だと思い込んでいた。ワイン初心者ありがちなミス。以前飲んだOddero 2017はLa Moora村のもので、長期熟成に耐える懐の深さと、ほんのり枯葉っぽさ土っぽさがある骨太なスタイルだったが、今回はVerduno村の2020でOdderoよりだいぶライト。エレガントで繊細な印象。しかしバローロらしい王の器の片鱗も感じる。
京都の七谷鴨は、鴨らしい野生味もありつつも繊細で深い香り、上品な肉質。確かに、これに合わせる赤はボルドーの重い赤や、Odderoの重厚さではなく、鴨の野生味とネッビオーロの土っぽさで合わせつつ、エレガントで繊細なVerdunoのバローロを合わせるのはベストマッチな印象。そんなことは思いつつも、エレガントさ繊細さで合わせる世界観であり、良くも悪くもガツンとインパクトがある料理/ペアリングではなく少し印象は弱いかもしれない。
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最後のメインディッシュはキャベツのパイ包み。タイトルは「主役が逆に」ということで、普通は主役になるセコ蟹をビスクソースに、脇役になりがちなキャベツを主役にしたスペシャリテだそう。
料理が運ばれてきた段階で、パイの香ばしさとソースの匂いが食欲を掻き立てる。口に入れると熟成されたキャベツの甘みがしっかりと口の中に広がり、キャベツが主役になるのも納得。
そして最後のペアリングはなんとシャンパン。締めシャンというやつか。シャンパンのブリオッシュ香でパイと合わせつつ、酸味で濃厚ソースを中和しつつ、泡で口をリセットして、キャベツの甘みをより感じやすくさせるような方向性。料理と同じくテンプレを裏切ってきてお洒落で良いなあと思いつつ、ペアリングは最後まで比較的さっぱり系な合わせだったなという印象。
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ラストはデザートが3種類。どれも美しく面白く美味しくて良いね。甘さ一辺倒な感じではなく、塩味を多用していたりしてて、甘すぎるのが嫌いな男性諸君でも食べやすい味。そして見た目も面白く美しい。
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総合的な印象としては、コンセプト通り日本の風土をフレンチの技術で仕上げている方向性であり、どれもフレンチらしく華やかでイノベーティブで未知の味でありつつ、日本らしい繊細さや柔らかさ、食べ慣れた食材の親しみを感じる料理だった。個人的にはかなり好きな方向性。
そしてワインペアリングは「Travel Paring」というメニュー名通りで、フランスと日本から構成される料理に、世界各国のエッセンスを付け足していくような遊び心があって良い。料理、ワイン、立地、内装、サービスの全てがクオリティが高く、また世界観が良く、令和の最先端のレストランといった印象。
また、コテコテのクラシックなフレンチのような「美味しかったけどちょっと胃が疲れたね」というような感想がなく、良い意味で軽やかでボリュームも控えめで食べやすいフレンチなのもポイント。
 
大雑把な方向性で言えばカンテサンスに近しいものを感じるが、それらより複雑でより最先端のフレンチらしく、そして繊細さの意味では和食らしさも感じる方向性だったかな。大満足でした。
 
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二次会はステーションタワーの1階にあるルプレスティンへ。お洒落でイケイケで使い勝手が良く好き。
虎ノ門ヒルズステーションタワーはB2から49階まで全てイケイケであり、食の一大エンターテイメントビルの様相になっており、森ビルの凄まじさを感じる。ありがとう森ビル。
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