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旅をする、本を読む

今年になってから、そういえば自分は旅と本が好きだった、とふと思い出した。 それからと言うものの、ぶらりと旅に出て、旅先でただただ本を読んで、のんびりするのをよくやっている…

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今年になってから、そういえば自分は旅と本が好きだった、とふと思い出した。
それからと言うものの、ぶらりと旅に出て、旅先でただただ本を読んで、のんびりするのをよくやっている。
だいたい月1以上、時にはほぼ毎週のようにどこかにいっていた。

旅先で本を読んでいると、新鮮な景色や食べ物といった刺激と一緒に、その時読んだ本の内容や思索が記憶に残って良い。

ここでは、今年行った様々な場所と、食べ物と、記憶に残った本を、少しだけ紹介する。

台湾

今年のゴールデンウィークはどこかに行こうと考え続けていたものの、忙しくて予定を考える暇もなく、何も予定をいれずにGW初日を迎えた。

こんな人生を過ごし続けて良いのか?そんなことを考えて、2日後の航空券を買ってノリと勢いで台湾へGO。台北と台南を7泊8日で巡る旅をした。

美味しいものを食べたり、異国の景色を見ながら色々と思考を巡らせたり、色々と出会いがあったりで、とても楽しい旅になった。詳しくはこちら

DIE WITH ZERO@台北

台北に到着後、不思議とがっつりと観光をしたい気持ちでもなく、夕飯までユースホステルの共用エリアでまったりと読書。そこで読んだのがこの本。

DIE WITH ZEROの主張は基本的に自分がずっとやっていることなので、流行ってるから買ってはみたものの得られるものは少なそうだ…と斜に構えながら読んだが、なんだかんだで各所が刺さって、結局今年を過ごす上で強く意識した本となった。

「欲望には消費期限がある」「今を幸福に過ごした記憶は、後からも繰り返し使える資産のようなものだ」といった考えをベースに、今年はひたすらに色んな幸福な経験を積み重ねた。この話はまた別で書きたいところ。

肯自然 Can Nature@台北

見知らぬ土地の美味しいものは、現地の人に聞くに限る。そして、美味しくてセンスの良いお店を知っている現地の人と知り合うには、センスの良いワインバーに行くのが良い。

そんな下心を少し抱えながら、ブルータスで見かけたこちらのお店に突撃。心優しい台湾の方や、日本人観光客と一緒に、いろんな情報を教えてもらいながら結局5時間近く飲んだ。心に残る良い一夜となった。

台湾はワインの文化の印象が薄いが、最近はここCan Natureのようなナチュラルワインを取り扱うセンスの良い店がちらほらと出てきていたり、この暑い気候の中で作る美味しいスパークリングワインがあったりと、盛り上がりを見せているそう。

松本本箱**@長野**

ホテルで本を読むといえば、後にも紹介する箱根本箱というホテルが大好きなのだが、その姉妹店である松本本箱にも来訪。

東京から松本は少し遠い印象だったが、特急あずさに乗って本を読んでいたら意外とすぐ着いた。ホテルまでタクシーで移動したらホテルまでもすぐ到着する。箱根で何度か電車を乗り継ぐよりも、なんなら体感距離は近いかも。

綺麗でセンスフルな打ちっぱなしの室内で、松本の眺望を眺めながら、美味しい空気とともに、たまに風呂に入りながら、読書し続ける体験は幸福度が高い。読書に疲れたら付近を散歩して哲学カフェに行ったりで気分転換できる。

往復書簡 初恋と不倫

往復書簡形式、つまり手紙やメールのやり取りのみ、地の文章なしで進んでいく小説。
ウィットに富んだ文章、テンポの良さはさすが坂元裕二。

ライトすぎるラノベは好きじゃないし、重すぎる本格派も好きじゃないのだが、この本は個人的に心地よいバランスでとても良かった。そして登場人物の造詣やら甘酸っぱい会話の数々が色々と刺さる。思うに自分は、手紙という、誰かの心情を誰かに向けて書いた、ひどく私的な言葉の羅列が好きなのかもしれない。

銃、病原菌、鉄

大昔に1/3ほど読んで中断してしまっていたので再読。

「アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。現在の世界に広がる富とパワーの地域格差を生み出したものとは何か」という問いに対して、科学的な思考で立ち向かうのが良い。この手の本では自分の中でのバイブルと呼べる本。

この本の結論を端的に極論すれば「全ての差異は地理的条件により生み出された」という非常にシンプルな結論であり、自分には納得感があるものだった。

この本と同じ思考法で「和食はなぜ日本で生まれたのか。なぜフランスでは寿司が生まれなかったのか?」とか、そんなことを考え、調査していくのが今年は楽しい。

箱根本箱

松本本箱に続き、箱根本箱にも再訪。

松本は旅館を改修しただけあって和のテイストが強く、いい意味で館内は陰の印象が強い場所が多いが、箱根本箱はエントランスの吹き抜けの本棚から始まり光に溢れている印象がある。

食事についても、松本は地元の食材を使ったヘルシーな創作料理だが、箱根はもう少しパンチがあってカロリーの高い、シャンパンや赤ワインが合うような食事が多い印象だ。食事は個人的には箱根が好きかも。温泉については松本本箱が好き。

箱根の緑を見て、宿についてウェルカムドリンクを飲みながら本読んで、美味しい夕飯とともに夕暮れを迎えて、ミニシアターの短編映画で心を刺激されて、露天風呂入って、宿の近くを散歩して星空を見て、というのが鉄板コースである。

TWIN-LINE HOTEL KARUIZAWA JAPAN@軽井沢

今年の夏は暑すぎた。本当は毎年恒例の札幌旅行にいこうと思っていたが、札幌ですら大して東京と変わらないような猛暑なのを知り、行き先を軽井沢に変更。4泊ほどして前半は読書、後半は普通に仕事をしていた。

軽井沢に行くときにいつも泊まっているのはTWIN-LINE HOTEL。モダンでお洒落な内装と、夕食のスペイン料理が非常に好み。夕食に関しては料理のレベルや軽井沢価格を考えればもっと高価になりそうなところ、まあまあなお値段で高クオリティのスパニッシュを味わえてとても良い。

仕事は軽井沢プリンスホテルのワーケーション施設を使ったが、なかなか開放的な施設で、軽井沢の1日の天気の移り変わりを眺めながら朝から夜まで仕事ができて良かった。

一流の本質

20人の星付きシェフの仕事論が載っている本。
仕事への考え方はシェフそれぞれで違いつつも、ほぼ全員に共通しているのは高いプロフェッショナリズムだ。

「毎日1つでも成長する」

「1つでも新しいものを探す」

「クオリティにこだわり抜く」

「24時間料理に向き合う」

「自分で店を持ち始めると景色が変わる」

「お客様が何を望んでいるのかを常に推察する」

「レシピ通りにやるのはベストではない」

こんな考え方に触れると、分野は違えど自分も身が引き締まる感覚がある。
今年は料理人からこういったプロフェッショナリティを学ぶことが多い年だった。

また大変恥ずかしながら、一般人としては「料理ってレシピづくりは大変だけど、レシピさえできれば、毎日同じ食材を仕入れてレシピ通りに調理するだけのルーティンワークでしょ?」という印象を心のどこかで持ってしまっていた。

しかし、本物の一流の現場とは全くもってそんなものではない。一流の現場は、日々変わる食材の状態、お客様の様子、時間的制約、そしてその場の閃き・センスをもとに、毎日、昨日よりもベストなものを提供する過酷な現場だ。その認識を持って、より料理人への尊敬と感謝を持つことができるようになった。

AIとSF

ChatGPTの登場で全てが変わった今年。そんな折に刊行された、大規模言語モデルをベースとした短編SFが複数収められた短編集。

数百年後を描く壮大なSFも好きだが、個人的に一番好きなのは「これ本当にできちゃうかも?」と思わせられるような、現実と地続きになったSFだ。短編集の一番最初の話はまさしくこれで、「LLMに味覚の入力も与えてマルチモーダル学習をさせていった結果、汎用人工知能(AGI)が生まれたかも…?」という本当にありえてもおかしくないような内容で、とてもワクワクした。

大学でこの分野を専攻して、トップカンファレンスに通す程度のそれなりの成果を出したものの、「人工知能」の実現にはまだまだ先であることを感じ研究を諦め民間に就職した身としては、もうここまでのAIが生まれてしまったのかというのに素直に驚きと期待を感じている。
ここから大きなブレークスルーはしばらく起きないのか、数年で更に技術が発展し本当に汎用人工知能が生まれるのか。本当に楽しみな時代に生まれたものである。

青山グランドホテル

毎回遠出するのも大変だし、たまには近場で旅気分を味わってみるかということで、気になっていた青山グランドホテルへ。

青山グランドホテルはワーケーション用の部屋が用意されており、ハーマンミラーの椅子と机で作業をすることができる。今回はそこを予約したつもりだったのだが、予約時のミスかなんなのか、謝って普通の部屋を予約してしまった。

予約ミスにげんなりしたり、普通に仕事する必要があったり諸々とやっていたら、結局ほぼ本を読まずに終えた。まあそんなこともある。

ホテルの居心地は非常に良かったのでおすすめ。2Fの川上庵で美味しい蕎麦と日本酒をランチで食べつつ、チェックイン後は部屋に大量に用意されているお酒をいただきつつ、夜は最上階で夕日を眺めながら創作イタリアンをいただける。部屋に泊まるとイタリアンがかなり割引されて予約できて良い。イタリアンの後はそのまま最上階のチャラいルーフトップバーでチルにGO。

Kei@草津

温泉に入りたくなって草津へGo。草津はなかなか遠くて気軽には行きづらいが、温泉街としての雰囲気はとても好き。

お世話になったKeiは、種類の異なる貸切風呂が3種類あって、どれもなかなかに楽しく風情があって良かったのでオススメ。

歴史を変えた6つの飲物

のどの渇きは、空腹よりも重大な死活問題だ。人は食べ物がなくても、2-3週間は生きられるかもしれないが、飲み物がないと、よくてせいぜい2-3日しかもたないだろう。水分は呼吸に次いで重要なのである。

そんな出だしから始まり、人類の世界史を「ビール」「ワイン」「蒸留酒」「コーヒー」「お茶」「コーラ」という6つの時代に分けて語るユニークな本。それぞれの飲み物についても、人類史についても詳しくなれる良本。

SOKI ATAMI@熱海

熱海で一番好きな宿はここ。とにかく飯が美味く、温泉も良く、そして宿が綺麗でお洒落で、室内だけでのんびりと過ごせる。大人の熱海旅におすすめ。

TRANSIT(トランジット)26号 美しきオランダ・ベルギー

もうすぐベルギーに行くので読んでみた。ベルギー、オランダについて正直何も知らなかったが、美しい街並み、ドラッグや風俗、芸術、ビールと美食、ファッションなど各種観点を知れてよかった。

そして何よりTransitは写真が美しく心に響く。はやく旅に出たくなる。

熱海は旅というより小旅行といった趣ではあるが、知らない土地を散歩して、色んな景色を見ながらとりとめもなく思考を巡らせて、例えば自分の人生について振り返っていると、やっぱり主な思い出は旅にまつわる記憶が多く、これからも幸福な記憶を残していきたい気持ちになる。

御宿 野乃@富山

良いホテルに泊まるのは楽しいが、毎回良いホテルだと資金的に辛いし二の足を踏む。

もともと大学の時はバックパッカーで海外の格安宿に泊まっていたメンタリティの持ち主なので、カプセルホテルとか安宿に泊まってサクッと帰ってくるのでも十分楽しい。

ということで今回は野乃をチョイス。ドーミーイン系列のホテルで、必要十分+αな施設がある満足度の高いホテルだ。綺麗な館内に温泉と夜鳴きそばがあったらもうなんでも良いよね。

海老亭別館

タケマシュランさんの記事を読んで気になってたので訪問。いやまた素晴らしかった…。

この前々日に西麻布の和食に行って感動してたが、ここの和食でもまた感動。上品すぎて地味な高級和食は好きじゃないが、こちらは上品さはありつつ地味でもないというか。西麻布和食は上品かつ派手って感じで、こちらは派手ではないけどでも震える和食。

長くなるから省略するけど空間もとても良かった。また冬と春に来たい。

新・都市論TOKYO

最近は引っ越しでチャラい物件にいくのもあり(?)、都市計画や建築に興味を持っている。

面白かった本はたくさんあるのだが、特に読みやすいのは隈研吾の本。色々読んだが、タイトルの「新・都市論TOKYO」は汐留、丸の内、六本木、代官山、町田を題材にそれぞれの都市計画の特徴を隈研吾が語っている本で、馴染みがある街が例になっているので分かりやすい。

「汐留ってなんかオシャレだけどまとまりないよなあ」とか「六本木ヒルズすごい」とか「代官山は落ち着いててオシャレ」のような、それぞれの街に漠然と感じていた印象が、都市計画のレベルで具体的に語られててとても面白く、街に対する解像度が上がった。

外食についても街についても、現代の一般人としては「当たり前のようにあるもの」であり、それがどのように出来上がっているのか解像度高く観察している人は少ない。言ってしまえば「鮭の切り身が川を泳いでると思っている若者」のような状態だ。

当然だが、この街が出来上がるまでには、さまざまな人々の意思があり、歴史があり、この風景が出来上がっている。それを感じながら街を歩くのはなかなか楽しい。

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Katsuma Narisawa

Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.

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