今年も振り返ります。
全ては書ききれないので、その中でも特に記憶に残っているものを。
前回
スペイン旅行
今年美味しかった思い出としてまず思い出すのは、やはりスペイン旅行。
新卒同期達とスペインでワイワイと美味い飯を食った。いろいろ食べたが、本当にどれも美味しく、ハズレがなかった。
その中で特に記憶に残っているものを強いてあげるなら、意外とBotinの豚の丸焼き。シンプルに焼いただけの料理だが、人生トップクラスの肉だったように思う。
全体の体験で言うとサンセバスチャンのバル巡りなのだが、全体的に味が濃い料理を連日ひたすら食べて胃もたれした結果、なんとなく印象が悪くなっているかも。食べ過ぎ、よくない。
HAJIME@大阪
2024年の美食といえばこれか。詳しくは記事の方で。
食事というよりも、良くできたインスタレーションを見たような体験であり「美味しかったもの」というランキングとは少し違うジャンルかも?そんなことさえ感じてしまうような体験。もちろん料理自体も抜群に美味しいので、ぜひ行ってみてほしい。
大橋MWのワイン会
麻布台ヒルズのインタートワインさんがやっているワイン会に、秋頃から毎月参加させてもらっている。
大橋MWおすすめの世界各地のワインの生産者を呼んで、生産者の言葉や大橋さんの解説を聞きながら、美味しいワインと食事を楽しむ会。普通にその辺のお店でペアリングコースを楽しむよりもコンセプトがより強く感じるのと、食事もワインも常にレベルが高いので毎回とても楽しませてもらっている。
どこにも感想をまとめてなかったので、ここで簡単にまとめておこう。
キリヤーニ(ギリシャ) x 虎景軒@ジャヌ東京
ギリシャワインとモダン中華という組み合わせに惹かれて参加。中華とワインは一昔前の認識では合わせづらいものだと感じてしまうが、モダンなシーンではもはや一般的な組み合わせ。
キリヤーニのワインも中華も、とにかくレベルが高い。そして高級中華というと美味しくはあるもののどこか取っ付きづらい印象で、自分から進んで食べにいくことはあまりなかったが、ワインとのペアリングによりどこか親しみやすく、そして新しい世界が開けたような感覚があり、個人的にとても良かった。こういう感覚が得られるのが毎回とても良い。
ギリシャワインといえばミネラル感ある白ワインを魚介と合わせて美味しい!くらいな解像度しかなかったが、この日飲んだ赤もロゼも美味しく、浅すぎたなあと反省。特にクシノマヴロで作るアカキーズとラミニスタが素晴らしかった。会の途中でブラインドテイスティングクイズが催され、イタリアワインの王様ことバローロとラミニスタ(市場価格でバローロの1/3)を飲み当てるクイズをしたが、「これを間違えたらマスターオブワインは取れませんね」という大橋MWと共に自信満々に同じ回答をして見事に外した。フリオチが効いていて面白かった。それくらいラミニスタは素晴らしかった(大橋MWは盛り上がるために間違ったのかもしれないが)。
カンタラピエドラ(スペイン) x AnCom@広尾
スペインのワイナリーであるカンタラピエドラを招いて、広尾のベトナム料理AnComでのワイン会。AnComは大橋さんとも仲が良く、ワインペアリング本を出版している大越ソムリエがプロデュースしているお店。
土着の葡萄品種であるベルデホらしいワインを作ることに拘っている、というお話がとても良かった。周囲のワイナリーがベルデホを近代的な手法で、フランスのソーヴィニヨンブランのようなワインを大量生産している中で、ベルデホらしい、ルエダらしいワインを作ろうとしているそう。
今年は「メディウムスペシフィティ」という言葉が好きで、例えばアートにおけるそれは「絵画なら絵画でしかできない表現を、彫刻なら彫刻でしかできない表現をする」という思想なのだが、個人的に何かを突き詰めようとすると、必ずスペシフィティが顕在化するようなものだと考えている。そしてワインの世界における「スペシフィティ」は、ざっくり言えば「テロワール」であり、その意味でテロワールが感じられるワインが自分は好きだ。「美味しさ」を突き詰めると必ずテロワールと向き合う必要があるように思う。
そんなことを感じさせられるカンタラピエドラのワイン。ざっくり言うとソーヴィニヨンブラン系の味だが、フランスらしさではなくスペインらしさ、優しさ、まろやかさがあるような気がする。そのまろやかさが、上品で綺麗でありつつエスニックなAnComのベトナム料理に合って良かった。
グランポレール(日本) x 慈華@青山
またもやワインと中華の組み合わせだが、今度は日本ワインと日本らしい中華。
日本ワインの印象は良くも悪くもクセなくスッキリとした素直な味で、例えばフランスワインの華やかさはないなあと思っている。まさしく、日本人らしい印象であり、味の面でいうと個人的には物足りなく感じることが多い。
そんなわけで個人的に好みではないのだが、慈華の和食のような繊細で滋味深い中華に合わせるには、グランポレールのクオリティの高い日本ワインが凄く合っていてとても良かった。この中華に合わせるには、初回のキリヤーニではないだろうし、逆にグランポレールに合わせるのはジャヌ東京の中華ではない。
会の途中で「ワインを飲むと、その醸造家の性格がわかる」「(逆に言えば)飲んでその人の顔が思い浮かぶようなワインを作りたい」というお言葉があったが、まさしく長野や北海道の真面目で落ち着いた日本の方が作った綺麗なワインであり、綺麗な中華だった。そんな印象。
98WINEs(日本) x FUSOU@渋谷
前回に引き続き日本のワイナリーと、今年渋谷にオープンして話題のフレンチのFUSOUさん。FUSOUに行くのは夏に続いて二回目。
前回の日本風味なワインと中華という組み合わせに続き、今回も日本のエッセンスを感じるワインとフレンチで大変良かった。恥ずかしながら98WINEsさんのことを存じ上げていなかったが、非常にレベル高く、良い意味であまり日本らしくない独特さを感じるワインだったような、しかしヨーロッパのワイン的な華やかさを感じる方向性でもないし、日本らしい独特さと言えるワインか…?なんてよく分からない感想。FUSOUの料理もどれも素晴らしく、それぞれに華やかなワインを合わせてもいいのだけど、98WINEsを合わせるとまた違う世界観が出来上がる。
ワイン会は関係ないが、今年の前半は神の雫にハマった年でもあった。それを考えると、今年は特にワインにハマった年だった気がする。
神の雫の第二部、マリアージュ編がとても好きで、自分が好きなのはマリアージュなんだなあと感じている。第二部のコンセプトを自分なりの言葉で言うと
「マリアージュとは結婚であり、結婚には良い結婚と悪い結婚があれば、最上の結婚もある」
「幼馴染同士で結婚するような結婚ももちろん素晴らしいのだけど、そうではない、奇跡的に出会った男女の結婚のような結婚は素晴らしい。どちらも優劣があるわけではなく、好みでしかないが、自分は後者が好ましい」
「そこでいう奇跡的な組み合わせというのは、『日本人は真面目だよね』のような大雑把な括り…ワインで言えば『白は魚に合うよね』という解像度ではなく、そのワインの個性と料理の個性が細部までドンピシャで合うようなマリアージュが素晴らしい」
こんな感じかなあ。ちょっと雑なまとめだが。
この辺のことを感じながらワインペアリングを楽しむのが今年は本当に楽しかった。もうちょっと解像度上げた文章を今度書きたいな。
神の雫を大昔に読んだ時は、よくある過剰な表現が乱発されるよくあるグルメ漫画…みたいな印象だったところ、今読むと全文にとても共感してしまい、本当に良い漫画だなと思っている。見る目は変わるものだなあ。
海老邸別館@富山
今年もお邪魔させてもらった。未だにコースの料理をほぼ全て覚えてるような、そんな思い出深い体験だった。やっぱり和食とワインのペアリングは好きだな。
Falo@虎ノ門ヒルズ
疲労困憊した時の駆け込み寺枠。今年一番いったイタリアン。料理もワインも全て美味しいが、気軽に駆け込んで飲み食いしただけで普通に1.5万以上を請求されて財布が傷みがち。でもそれでも駆け込みがち。お世話になりました。
鮨 田中@南麻布
知り合いがオススメしてたので年の瀬に駆け込んできた。でてきたもの本当に全部が美味しかった。しかも酒もまあまあ飲んで一人2.3万ほどと安い。
個人的に感じた特徴は、魚自体のおいしさ。とにかく魚が美味しい。金沢新潟とかのエリアの新鮮で美味しい!という味とはまた違く、しかし伝統江戸前寿司の仕事をしました!って味とも違う、魚本来の美味しさ。あまり言語化できてないが、とにかく個人的に新しい世界の美味しさでとてもよかった。
特によかったのは、鮑肝ソース、あん肝巻物かなあ。鮑肝ソースは肝ソースが美味しいのであって鮑がそこまで…ってこともあるが、鮑自体がめちゃくちゃ美味しいのと、らっきょうがいいアクセントになっていた。
年の終わりは忙しかったり元気なかったりで正直鮨を食べるテンションじゃ全くなく、会食も断りまくっていたのだが、珍しく食べにいったら美味しすぎて強制的に元気出た。鮨、すごい。こういう鮨に出会い続けるために、しっかり稼ぎ続けたいものである。