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Kabi / 不動前

フレンチでも和食でも単なる北欧ガストロノミーでもなく、日本食材と発酵というコンセプトで独自の路線をいくイノベーティブなネオガストロノミー

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いつか行きたいと思いつつ、なかなか行けていなかったkabiにようやく訪問。もともと目黒駅前に住んでおり、近所なので気になってはいたものの、適切な機会が見当たらずずっと後回しになっていた。不動前は行くのが少し面倒なので、今回は中目黒で集合してタクシーで移動。

kabiは国内外の有名店で修行した安田シェフと江本ソムリエが「日本の食文化や食材を世界に発信する」をテーマに立ち上げたレストラン。店名の「kabi(カビ)」が示す通り、「発酵」が一つのキーワードになっている。近年はミシュランの星もゲットしており今は一つ星。

日本の食材にフォーカスするが和食ではないその方向性は外国人にもウケが良さそうで、この日も半分ほどは外国のお客さん。「伝統的な和の趣きと最先端のダイニングトレンドが混じり合う独自の世界観」「2020年代の東京を代表するネオガストロノミー」との前評判。

さて、乾杯はビールから。筑波のビール?ワイン酵母で作っているのだとか。爽やかで酸味が特徴的なサワースタイル。空腹の胃に優しく染みる。連れにも高評価。

カメラの設定をミスっていることに気づかず、しばらく手ブレ写真が続く。無念カメラの設定をミスっていることに気づかず、しばらく手ブレ写真が続く。無念

付き出し。鮑と雲丹、山菜と肝酢。まず山菜が美味い。本当に美味しい山菜ってこんな味するんだな、と一同で唸る。そして当然ながら鮑も雲丹も美味しい。食材の本当の味が色濃く、そして繊細に提供されるスタイルという印象。既に勝ち確。

肝酢はさながらマヨネーズのような濃さと酸味。ビールの爽やかな酸味と合う。

お次はサザエ。ワカメと山菜と鰹節の出汁。言ってしまえば単に「それぞれを出汁に入れました」でしかないのだが、それぞれの食材の味が濃く、出汁が本当に美味しい。

ペアリングはロゼ。オーストラリアのメメントモリ。スモーキーさが感じられる香りと味が、山菜と鰹節の土っぽさと合う。良い。

流石にブレすぎである。料理とワインと会話に集中していると写真が雑になりがち。流石にブレすぎである。料理とワインと会話に集中していると写真が雑になりがち。

旬菜。旬のスナックエンドウと、イチゴとアスパラガス。こちらも食材の味が濃い。それしか言ってないが、でも本当にそういう方向性。野菜ってこんなに美味しいんだな。

食材の味をそのまま楽しむ系の方向性は、ともすればシンプルすぎて物足りなくなりがちだが、kabiは適度な塩味と油脂も提供するスタイル。こちらもオリーブオイルと塩が適度にかかっていて良い。
本質的で繊細、だけど分かりやすく美味しく満足度高いというバランス感が良い。

ペアリングは引き続きロゼ。だいぶ少量しかいれてくれないなあ、と思っていたら、飲み干したらガンガン継ぎ足してくれるスタイル。結果、だいぶ飲むことに。

お次はアスパラガス。ここまでがシンプル系だっただけに、パンチが強い揚げ物が登場して一気にボルテージが上がる。しかしアスパラガスの繊細な甘みは残すような世界観。良い。

酒は廣戸川。しっかり日本酒感があり、揚げ物の油を受け止めつつ、爽やかな酸味もあるスタイル。何よりグラスが良すぎる。器が全て綺麗だな。

鯖。見た目が良いね。和の世界観。これがスペシャリテかな?
手でつまんで食べると、中身は鯖と米。日本酒と合わせるとまた良い。

古民家をモダンに改装したような店内の雰囲気もとても良い。照明はたぶんNEW LIGHT POTTERY。これ欲しいんだよな。

オープンキッチンのライブ感も良い。お次の海老の揚げ物の香ばしい香りが漂ってくる。

お次は海老。生のエビと、揚げ物と、グリーンピースと、出汁のソースかな。ただただ美味い。

オレンジワインの酸味も良い。全体的に、ペアリングは酸味が印象的な方向性。

お次は「喜知次」というメニュー名。何なんだろうと疑問に思っていたら、キンキの北海道での呼び名だそうな。脂ののったキンキと、肝と、そら豆。個人的今日一番のヒット。脂の乗った魚って、こんなに美味しいんだな。もうほぼ油なんだけど、くどくはない絶妙なライン。
オレンジワインでさっぱりいただくのもよし、日本酒を少し残しておいたので日本酒でいただくのも良き。そら豆はビールが欲しくなるような香ばしさ。

お次が漬物。ペアリングは鹿児島のお茶。漬物というメニューからは想像できないものが出てきた。味はさっぱり爽やかで、メイン前のソルベのような運用方法。ここまで高まってきた熱を抑えて、いったん小休憩。

ソルベで口直しするのはよくあるが、ペアリングでノンアルコールを出して、飲み物でも気分をリセットさせてくるのは初めてだった気がする。コースの全体設計がよく練られているなあ、という印象。

メインは羊肉。ペアリングは赤で。メインについても、がっつりコテコテな方向性ではなく、噛むたびに肉の本当の美味しさ、滋味深さが溢れ出てくるような方向性。そして皮の方の部位は脂がヤバい。2つの味が楽しめて良い。モリーユ茸、羊の出汁で作ったソース、タマネギのソース、デスソースとかいう辛いソース、それぞれも良かった

すごく良かったし、この店ならこういう方向性だなとは思いつつも、やはりメインは更にガッツリコテコテな方向性の方がインパクトあって記憶に残るよな、なんて我儘なことを思ったりもする。難しい。

最後はおじや。隣の外国人に「This is ジャパニーズリゾット」と説明していたが、まさしく和風リゾットと言うべき味。しらすがまた美味しい。

最後のペアリングは醍醐のしずく。ペアリングでよく出てくる印象。乳酸発酵の甘味と酸味がいいよね。

デザートは柑橘、抹茶のアイス。最後まで良きでした。

フレンチでも和食でも単なる北欧ガストロノミーでもなく、日本食材と発酵というコンセプトで独自の路線をいくイノベーティブなネオガストロノミーという印象。世界観がとても良かった。近所に住んでいたころに来なかったことを後悔。

ある程度一通り美味しいものは食べてきたつもりだったが、こういうレストランと出会うと、まだまだ知らない世界がたくさんあるなあと思い知らされる。北欧ガストロノミーの方向性はまだあまり経験していないので、今後開拓していきたい。良いお店でした。

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Katsuma Narisawa

Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.

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