CAVE D’OCCI WineryStay TRAVIGNE / 新潟
滞在型ワイナリーの先駆けの地で、テロワールを感じるワインと美食を堪能する贅沢
新潟の泊まれるワイナリーことCAVE D’OCCIへ。広大な葡萄畑とシャトー風の建物が織りなす非日常的な景観が有名で、ワインマニア以外の層にも好評。ラグジュアリー路線の滞在型ワイナリーの先駆けであり、自社畑の葡萄から生まれる良質なワインと旬の美食をゆっくり堪能する贅沢な滞在が楽しめる、日本でも珍しいワインリゾート。
施設に着くと、まずはウェルカムドリンクということで、FUNPPYシリーズのロゼスパークリング。薔薇の季節ということで、薔薇ものっている。味わいはピンクグレープフルーツ系で、香りがとても良い。早速ワイナリーにきた実感が高まる。
館内のインテリアもセンスよく、モダンなお屋敷にお邪魔したような雰囲気。窓からはさっそく葡萄畑が見えて美しい。


客室は10室ほど。1階の部屋は窓を開ければそのまま葡萄畑に歩いていける好立地。ボトルを買ってきてここで飲んだりするのも心地良さそうだ。
夕食まで、ワイン畑や付近を散歩したり、館内を探索したり、ラウンジでもう一杯ほど飲んだりして時間を過ごす。


夕食の時間は、まずラウンジに集合してくださいとのこと。何が始まるのやらと思っていると、最初の乾杯はラウンジのテラスでワイン畑を見ながらアペリティフを提供とのこと。粋な演出。

スパークリングは「むささび」というカーブドッチの動物シリーズのもの。なんとカベルネ・ソーヴィニヨン(=黒ブドウ)主体で作ったスパークリングとのこと。シャンパンを作る際にムニエやピノノワールといった黒ブドウも使うことは知っていたのだが、カベルネ・ソーヴィニヨンを使うスパークリングは初めて聞いた。ちなみに、白ワインを作る際は白ブドウ、赤ワインを作るときは黒ブドウを使うのが普通。
味はコクと果実感があってクオリティが高い。日本ワインは正直好んで飲まないのだが、レベルが高くて良いね。

ちなみにカーブドッチのワインシリーズには現在3種類あり、品種の個性を活かす「セパージュ」シリーズ、醸造法ごとに動物名を冠した遊び心ある「どうぶつシリーズ」、食用ぶどうから造るジューシーな「ファンピー」シリーズがある。
そこで使われる葡萄品種は19種類にも登り、かなり多い印象。その点について質問すると、様々な挑戦の結果今の品種数になったはいいものの、やはり多いと考えているようで、今後はアルバリーニョに寄せていきたいとのこと。いろんな挑戦をして、最適な形を模索する姿勢は良いなあと感じた。
さて、お次はレストランへ移動し、本格的にコースをスタート。飲み物については、ペアリングが通常6000円、プレミアムコースで8000円というお安めの設定だったので、ありがたくプレミアムの方をいただく。


最初の1杯目は、「セパージュ」シリーズのブラン・ド・ブラン(すなわちシャルドネ100%)のスパークリングをいただく。先ほどのブラン・ド・ノワールと比べると、やはり繊細でドライな印象。フォーマルなディナーの一杯目としてはこっちの方が合うが、個人的な好みで言えばむささびの方が好きだった。


移動後のアミューズとして、最初にコンソメスープとパンが提供されるスタイル。コンソメの香りが良い。そして、この時点で既に何杯か飲んでしまっているので、コンソメの優しい味が胃に染みる。パンもかなりレベル高い。


稚鮎のライスフリット。稚鮎のほろ苦さがしっかりと出ており、そして衣のゴリゴリ感もつよく、ちょっと人を選ぶ味。ペアリングのソーヴィニヨンブランと合わせると、苦味が酸味で中和されて良かったが、単体で食べるとなかなか厳しかったかもしれない。


美雪ますのショーフロア。ショーフロアとは、加熱した肉や魚をいったん冷ましてソースで表面を固めた冷たい料理のこと。外側にチーズ系のソースがかかっており断面が美しい。ミキュイ(半生で仕上げる調理法)っぽい印象だったのだが、この辺の調理方法の解像度がないなあ。勉強したい。
アルバリーニョ2021の香りとミネラル、果実感にもしっかりマッチ。



外は夕暮れを迎えてマジックアワー。差し込む光の変化から時間の経過を感じる。



甲イカと葉玉ねぎのブランチャ焼き。合わせるのはカベルネ・フラン。イカに白ではなく赤で合わせるのが面白い。イカ単体というより、ブランチャ(=鉄板焼き)の香ばしさや葉玉ねぎの強めの匂いや味に合わせる方向性。良いね。
そして、イカも玉ねぎもとても美味しい。新潟は食材が美味しいな。



金目鯛の鱗焼き、南蛮エビのティエド。これが今日一番の美味しさ。新潟で食べる南蛮エビは、なぜこんなにも味が濃いのか。旨味の極みである。
これに合わせるワインはシャルドネ。濃厚な合わせで良いのだけど、日本ワインらしくさっぱりした後味でもある。


カベルネ・ソーヴィニヨンの枝葉で燻した鹿肉のロースト。バックヴィンテージのカベルネ・ソーヴィニヨンの2017でいただく。翌日のワイナリー見学でも説明していたが、フルボディ向きのテロワールではないため、そこはきっちり見切りをつけているらしい。こちらのカベルネ・ソーヴィニヨンも、一定の熟成感はありつつも比較的軽やかで滑らかな印象。



締めはコシヒカリのリゾット。案外とさっぱりしていて旨みが効いている系のリゾット。新潟は米が美味しいね。


デザートはシャルドネのムースリーヌ、ごとらってアイスクリーム。自家農場のジャージー牛乳を使ってるのかな?苺も美味しく、最後まで美味しくいただく。

デザートを食べ終わると再び宿泊棟に移動を促され、夜の雰囲気のラウンジで焼き菓子とコーヒーをいただいてディナータイムは終わり。

単にレストランでご飯を食べて終わりではなく、様々な演出・移動込みのディナーはオーベルジュならではといった印象。そして、登場する食材は地場のものなのはもちろん、そこにこの土地で作られたワインを合わせるというテロワールを強く感じる体験。
日本ワイン自体は自分の好みではなく、もっと濃さや華やかさが欲しいと思ってしまうタイミングは今回も多かったが、とはいえクオリティはとても高く、テロワールやら全体の体験も含めて、とても良い体験だった。
天気にも恵まれ、死ぬ前に思い出すような、美しい時間を過ごせたように思う。収穫時期とか、また違う季節にも来てみたい。
翌日の朝食は洋食系。オムレツが非常に美味しい。パンも美味しい。ヨーグルトも美味しい。
全てが美味しい朝食は幸福度が高い。


日中はワイナリー見学に参加。直近ワインスクールで学んでいるような内容を、実際の現場で説明してもらえてとても良かった。モチベーションも高まるし、こういうワイナリー見学にはもっと参加していきたいところ。


2日目の余った時間はブックラウンジでのんびり。こちらの選書は松本十帖などと同じく幅允孝氏が行なっており、なかなか気合いの入った施設になっている。


Katsuma Narisawa
Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.
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