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虎景軒 x Rudolf Fürst / 麻布台

金閣寺を映す静かな池のようなピノノワール

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虎景軒 x Rudolf Fürst / 麻布台

麻布台ヒルズのインタートワインさんが主催するメーカーズディナーイベントに今回も参加。今回のフィーチャーは「ドイツのピノノワールの魔術師」と称されるRudolf Fürst(ルドルフ・フュルスト)。会場はジャヌ東京の虎景軒。

このイベントに初めて参加したのは2年前の虎景軒 x キリヤーニの回。その時の体験が非常に面白く、ワインにのめり込むきっかけとなったので個人的には懐かしい場所です。虎景軒はイベント以外でも何度か訪れているが、美味しくてオシャレなので大変オススメ。

大橋MW、フュルストご夫婦の挨拶ののちにゼクトで乾杯。

ゼクト(スパークリングワイン)も造っていることに少し驚いたが、ゼクトは条件が揃った年のみ生産しており、年間約3000本と生産量が少なく、国外への輸出もほとんどない希少なものだそう。メイン品種はもちろんピノ・ノワール(ドイツ名はシュペートブルグンダー)。

味わいは上質なシャンパーニュと同レベルで、76ヶ月の熟成による繊細さと複雑性、コクが素晴らしい。シャンパーニュよりさらに冷涼さと透明感がある方向性かな。

一品目は蒸し鶏の冷菜 上海風葱生姜ソース。揚げた葱の香りを移したオリーブオイルの翡翠ソースが大変美味しい。

ドイツ生産者の来訪に合わせて、ドイツ国旗色のネクタイで参戦する方。オシャレすぎるドイツ生産者の来訪に合わせて、ドイツ国旗色のネクタイで参戦する方。オシャレすぎる

お次は2024年のリースリング。こちらも個人的には透明感を感じる仕上がり、日本ワインっぽさを感じる。よく言われる単語だと「薄い」方向性。しかし上質かつ、適度な果実感。リースリングらしいキュッとした酸味。

セバスチャンの話でも「旨味とかではなく、酸とリースリングらしい綺麗さにフォーカスしている」とのこと。そうね。

料理はアオリイカの香港風スパイス炒め。こちらも大変美味しい。虎景軒の料理は、日本人でも食べやすい程度の適度なスパイスに、素材を活かした方向性、そしてワインへの相性が良い味付けで、やっぱり好きだなあ。

お次はシャルドネ。うおお、美味しい。ブルゴーニュの高級シャルドネと同格の印象で素晴らしい。ここまでと同じく、少し冷涼さを感じる仕上がりで、酸味がやや強め、ミネラル感と塩味がある方向性。

大橋MWより、フランケン地方はブルゴーニュより内陸で海から遠く涼しいが、大陸性気候のため日中は暑く夜は涼しい。だから果実感がありつつ酸味もある方向性になる、というお話。この手の内容を最近WSETで散々やっているので、スラスラ頭に入ってきて楽しいな。​

醸造手法についても詳しい解説があった。このミネラル感には琥珀酸(しじみの旨み成分)も含まれており、これは醸造時に濁らせたまま発酵を開始することで、イーストにストレスをかけて生まれるものだとか。こうした詳しい話は難しいが、目の前の味が醸造の科学と地続きになっている感じが好き。

その他にもたくさん解説いただいたが割愛。

料理は海老と豆腐の重ね蒸し ズワイ蟹あんかけ。美味しい。

お次はいよいよピノノワール。まずは2023 Bürgstadter Spätburgunderから。

お〜、前評判通りレベルが高い。やはり透明感のある仕上がりで、日本ワインの方向性にも通じる印象だ。個人的なイメージで言えば、ボルドーのカベルネ主体のワインが​重厚で構造的な油彩画​だとすれば、ブルゴーニュのピノは​繊細で層のある水彩画​。そしてRudolf Fürstや日本のピノは、​水墨画のように要素を削ぎ落とし、本質のみを描く。禅に近い、静けさの世界観である。​

……という感想を大橋MWに話してみると​まさしくそこが要点だった模様​で、続けてMWとセバスチャンより解説をもらう。適切なコメントできて偉すぎるな俺(自画自賛)。

大橋MWが直近で提唱している最先端のピノノワールのスタイルは​「透明さ(transparent) 」​だそう。MWは​「静かな池に映る京都の金閣寺」​を例に出して、​「タンニンが多いと池は濁ってしまうが、タンニンが低い特性を持つピノノワールは”静かで透明な池”であり、その謙虚さ、繊細さ、控えめな表現、調和、シンプルさや安らぎの感覚、静寂さにより、”​​ブドウのテロワールを映し出す白いキャンバス”​​となれることがピノの良さ」​だという話。MWがニュージーランドの会議でこの話をした際は、スタンディングオーベーションだったそう。う〜む、かなり分かるなあ。

そしてRudolf Fruistはまさしくこの方向性。なぜこの方向性のワインをRduolf Frustで作っているのかと尋ねると、大きな理由は単にスタイル・作り手の好みの違いであり、セバスチャン氏が「飲み続けたいと思えるワイン」を作りたいと考えているから、とのこと。我々日本的な感覚をドイツ人のセバスチャン氏が持っていることに親しみを覚える。

お料理は北京ダックが登場。ジューシーかつ繊細な美味しさで良すぎる。虎景軒、やっぱ最高だな。

ラストは2021 Centgrafenberg Grosses Gewächs Spätburgunder。大橋MWより「より高価格帯のグレードのラインが、複雑さ重厚さを出すのではなく、透明感を磨き上げる方向性になるのが凄い(意訳)」とのコメント。本当にその通りであり、より透明に澄んだ水のような印象のワインという感想。

お料理は花ニラと黄ニラ マコモダケ切り豚肉のオイスターソース炒め。青椒肉絲的な。美味。

最後にアサリと青菜 福州産の炒飯をいただいて終わり。半分食べてから昆布細絲の清湯をかけて食べるスタイルで美味しく楽しい。虎景軒やっぱ最高だな(N度目)

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いやあ、普段あまり馴染みのないドイツワインについて、トップレベルの生産者とMWに解説してもらえて大変良い会でした。そして、日本から離れたドイツの地で、和の世界観を感じるワインが作り出されていることが大変面白い。ドイツ人と日本人は真面目さが似てるなんてよく言われるわけですが、やはりどこか精神性が似てるのかも。

料理とワインのペアリングは、Frustが日本らしさを感じるような透明感・静けさの方向性に対して、虎景軒は上質で適度に複雑でスパイシーさと油のある中華であり、個人的にはベストマッチじゃなかったかな?という印象。どちらも上質だしもちろん普通に合う訳だが。むしろ和食とかと合わせてみたいな。

とまあ、こんなことが語れるようになったのが数年前からすると大変な進歩である。引き続き色々なワインを飲んでいきたいところ。

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Katsuma Narisawa

Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.

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