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DRCラターシュ1990マグナムを楽しむ会

おまけでロマネコンティ1885マグナムという豪華布陣

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DRCラターシュ1990マグナムを楽しむ会

いつもお世話になっている大越ソムリエより「DRCラターシュを楽しむチャリティーディナー」にお誘いいただき、ありがたく参加することに。開催場所は西麻布で「メキシカンフレンチ」を提唱するNO CODEさん。​

この記事の読者向けに軽くラターシュについて解説すると(一体誰が読んでるんだ)、「ロマネ・コンティ」といえばワインについて詳しくない人でも知っている超高級ワインの代名詞なわけですが、その生産者が「Domaine de la Romanée-Conti(DRC)」であり、ラターシュはDRCが作るワインだ。

ラターシュは時にロマネ・コンティを凌駕すると言われるほど世界最高峰のワインの一つであり、ロマネ・コンティがしばしば“絹のよう”と形容されるのに対し、ラターシュはより力強く、スパイシーで野性味を帯びることが多いと語られる。ちなみにLa Tacheという名前は単にブドウ畑の名前を指しているだけであり、「DRCがLa Tache畑でとれたブドウで作ったワイン」の意味。DRCの他のラインナップも同じく畑の名前がついており、ロマネコンティもエシェゾーも畑の名前。

世界的に有名なフランスの二大ワイン産地といえばブルゴーニュとボルドーなわけだが、DRCを含むブルゴーニュの高級ワインは高級になればなるほど狭い地域名(最小が畑)をワイン名に関するのに対して、ボルドーは生産者のブランド名を前面に出してくるのが、思想の違いが見えて面白いポイント。​

更に補足すると、tâcheはフランス語で「仕事・任務・作業」の意味であり、“修道士の仕事の区画”のようなニュアンスの地名。そしてlaは女性名詞の定冠詞。畑仕事は女性の仕事だったということか。そしてロマネ・コンティは、ローマ時代に由来するとされる“ロマネ”の畑を18世紀にコンティ公が取得したことから名付けられたもの。

…とまあ、この手の話を深掘りするのが最近は楽しいわけだが、​ワインラバー以外の会で話してるとワイン蘊蓄おじさんに成り果てる​ので注意しなければならない。はい。​

今回のイベントは銀座ステファニー化粧品創業者の一家さんのコレクションがNPO団体に寄付され、そこからチャリティーディナーという形に昇華されたとのこと。単に超高級ワインを体験できるというだけでなく、自分の参加が僅かながら支援にも繋がる機会を作ってくださったNPO団体のキープスマイリングさんと一家さんに深く感謝です。​

下世話だが恐らく多くの人が興味があるお金の話に触れておくと、今回のDRCラターシュ1990マグナムは市場価格250万円とのこと。今回はチャリティーディナーとしてかなり良心的な価格設定で参加させてもらいました。

近年は超高級ワインの値上がりが凄まじく、一昔前の10倍程度の価格になっており、今ではロマネコンティであれば300万〜1000万円ほど、​史上最高額としては公式記録で6000万円以上(非公式で10億円以上)​という恐ろしい世界なわけだが、​なんと今回ロマネコンティ 1985 マグナムもいただくことに​。何やら状態が悪い可能性が大とのことで、抜栓した際の状態次第で、お気持ち分の寄付をもらえればとのこと。

状態がよければラッキー、くらいの気持ちで参加を表明したのだが、​これ本当に状態が良かったら何万円払えばいいんだ…???​と後になってから気づき、色んな意味でドキドキしながら参加です。​

さてさて、乾杯はシャンパンから。まずはRoses de JeanneのChampagne “Côte de Val Vilaine”。低収量でナチュラル寄りな作り方で、ほのかにナチュラルな雰囲気はありつつ上質で繊細なブランドノワール。本日のメインはDRCラターシュマグナムなわけだが、コース料理でメインの肉に合わせての提供とのことで、その前に何皿かと何杯かをいただく形です。

一品目はキノコのコンソメスープ。旨みが非常に濃くクリアで、シャンパーニュの旨みに合う。

二品目はマグロのタルタルにコーントルティーヤをまぶして、巻かないタコス的な一皿。これが美味しすぎてクリティカルヒット。醤油を混ぜたサルサマチャ(メキシコのスパイスオイル。食べるラー油的なもの)の独特な旨みと、マグロの旨み、そしてトルティーヤのカリカリ感が良すぎる…。ずっと食べていたい。

「NO CODEが提唱する “メキシカンフレンチ” を紹介も含めた一皿」との米澤シェフのコメント。いやあ、良い。

二杯目として、一杯目と同じくRoses de JeanneのUR/R18。一杯目と品種もヴィンテージも同じで、畑の区画が違うだけとのことだが、全く違う熟成感で面白い。

三品目はキャビア、ヤリイカ、酒粕とチーズのソース。これも美味しすぎるんだが。それぞれの異なる旨みがチーズのクリーミーさで包まれて爆発、そこにハッサクみたいな果実(詳細失念)で爽やかさもプラス。良すぎる。

三杯目は仙禽のオーガニックナチュール。なにやら非売品とのことで、普段仙禽でやらない「袋吊り」の作り方で、大越さんが作業工程をお手伝いして実験的に作ってみたものだそうな。ワイン的な用語で言えばフリーランジュースのこと。

一同が唸るほど透明感のあるすっきりとした、しかし美味しい液体という印象。いわゆる「水のような」「ずっと飲んでいられる」日本酒。これが精米歩合90と言うのだから恐ろしい。「まあ日本酒は精米歩合じゃないよね〜」「精米歩合1%なんていうのは(以下略)」なんて話で盛り上がる。

四品目はシンプルな白子。シンプルに美味いけど適度なトマトの酸味、ソースの濃さが大変良い。いやほんと凄いなあ。ここでトマトの酸味を足してくるのはちょっとメキシカンっぽい?

四杯目は樽が効いた上質な白ワイン。まあ普通にブルゴーニュの高級な白ワイン、ムルソーとかかなあと推測していると、なんとポルトガルの聞いたこともない品種の白ワイン。一同で驚き。「自分でもブラインドで出されたら間違える」「本当はブルゴーニュ以外にも美味しいワインはたくさんあるんですよ」との大越さんのドヤ顔コメント。いやあこれは脱帽。あんまり売っていないそうだが、もし見つけたら即買いだそうな。

五品目はホタテ。いやもうただただ美味しいです。

さて、いよいよ本日のメインイベント!ラターシュ1990マグナムのご登場。ドキドキ。

色味は中程度のガーネット。直近はワインスクールでひたすら色味の判定の練習をしてるわけだが、心持ち何やら美しく、透明感と艶、繊細さを感じる。いやハロー効果なのかもなんて薄っすら思いつつ、それでもやはり美しい。

香りは完全にターシャリーの印象(熟成由来の香り)。第一アロマ、第二アロマのほぼない、いわゆる「発達した」ワイン。キノコ、皮革、スパイス、古木、意外と乾いた印象に、ほのかな赤系果実。やや男性的なスパイシーさと、しかし丁度良く心地よいアロマ、中心はキノコっぽさが強いがそれだけで終わらない複雑さと心地よさ。風味は意外な滑らかさ、軽やかさ、適度な出汁感といった印象。思ったよりドライで軽やか。

ううむ、自分の中でまだ数少ない超高級ワイン体験への期待としては、もっと衝撃的な体験、腰が砕けるほどの官能的で艶のあるような香り・風味を期待していたのだが、そこまでではなかったというのが正直なところかな?人生で初めての超高級ワイン体験が印象に残りすぎているが、あれは初めてならではの衝撃であり、それを越える体験は中々でないかも。

そんな感想を頭の片隅で思いつつも、とはいえ勿論のこと上質で最高レベルのワイン。ずっと嗅ぎ続けていたい、ずっと飲み続けていたい、そう思える感じ。

大越さんは「ドライアプリコット、煮出した紅茶、全帽発酵によるグリーンの香り」「1990年は思ったよりエレガント」とのコメント。

完熟の状態については「軽やかで引っ掛かりがなくなってるのも完熟の証」「ワインは熟成すればするほど水っぽくなっていくが、本当に味が抜けると水になってしまう」「味が乗っている完熟な状態があと数年続く」と教えてもらいました。なるほど。​

さて、ラターシュに合わせるメイン料理は京都の七谷鴨。七谷鴨は個人的にapotheoseで食べた繊細な味が印象的だったのだが、こちらの鴨にはしっかり皮の脂身がのっており、油でジューシー。しかし上品で繊細でもあり、はちゃめちゃに美味しい。これは過去一美味しい鴨かも。菊芋のピューレ、植物性のソースもとても良い。

そこにラターシュを合わせると、キノコ系の旨味で同調しつつ、スパイシーさやドライな果実のニュアンスが肉の味に乗ってきて、しかし破綻しない「完璧」なバランスをより感じる。飲む前から大越ソムリエがデキャンタージュしてくれていたようだが、時間が経つとまた少し華開いた感じもあり。

さてラターシュを楽しみながら、本日のもう一つのメインイベントであるDRCロマネコンティ 1985マグナムを開けるお時間。

状態を確認すると、コルクが通常の位置より大きく下がっており、すぐにでも落ちてしまいそうな状態。コルクが乾燥して収縮してしまってる状態。またコルクの上にたんまりと黒く硬いカビの層が溜まってる模様。この辺はキャップシールの下なので開けないと見れないらしい。

本当はパニエが欲しいけど、マグナムサイズのパニエはグランメゾンでもない限りないそうな、

大越ソムリエが慎重に抜栓するも、残念ながらコルクが落ちてしまい、コルクを取り出す努力も虚しくそのままサーブすることに。

見た目は悪くない感じだが、香りを確認すると…はい、​カマンベールチーズの香りがします​。白カビ臭。チーズの向こうに素晴らしく上質なワインの輪郭がうっすら見えており、「完全な球体」と評される片鱗を感じてその点は流石にDRCといったところ。でも​半分はカマンベールチーズ​。残念。

大越さん曰く、こういう状態の悪いロマネコンティは誰も購入しないし夜に出てこないので、逆にレアな体験だとか。その場の方々とワイワイできて楽しい体験だった。

コースの最後はトリュフをのせたパスタ。​チーズ系のソースと白カビチーズなロマネコンティがまあ合わなくはない​。しかし残念ながらロマネコンティはほぼ残しました。

ラストはお米で作ったデザート。最後まで日本人でも食べやすく、しかしエキゾチックな味わいなバランスで面白い。

ということで終幕。貴重な超高級ワインを飲めて良い経験だった。こういうワインを飲む機会を増やしていきたいね。

そしてロマネコンティはワンチャンいけるかも…?と思ったのだが、なかなか現実は厳しいね。いつの日か完全なロマネコンティを人生で一回は飲んでみたいところ。​

…という夢を語ったところ​「そんな低い目標ではなく、ロマネコンティを無料でご馳走できるくらいの経営者を目指せ(意訳)」​と大先輩の経営者にフィードバックいただき、背筋が伸びました。一家さんのように自分もDRCを100本寄付できるくらいにならねば。頑張ろう、人生。

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Katsuma Narisawa

Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.

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