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ジョージアでワイナリー巡り

家で作って家で飲む。生活の延長の飾らない味がジョージアワインの印象

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ジョージアでワイナリー巡り

旅に行く際は何かしらのテーマを自分なりに設定すると楽しい。今回、友人の結婚式でギリシャに赴くことになったとき、せっかくなので周辺国も巡ろうかと悶々と考えた末、思いついた国はジョージア。何故なら、ワイン発祥の地といえばジョージアであり、そしてジョージアで生まれたワインを文明化したのがギリシャであるからだ。

そんな自分なりのテーマ(こじつけとも呼ぶ)を持ちつつ、未踏の地であるコーカサス地方に心躍らせていざ8日間。備忘録に旅の記録を残しておく。

ジョージアワインについて

ジョージアは世界最古のワイン発祥の地とされている。その歴史は紀元前6000年にものぼる。クヴェヴリという土器を地中に埋め、その中に踏み潰したブドウをいれて、ブドウ果汁がアルコール発酵するのを待つ。そんな原始的で単純な方法を、8000年前から現在まで続けている。

ジョージアでワイナリー巡りをしているとそんな説明を耳にタコができるほど聞くことになる。ジョージアのワインブランディングは、積極的にこの「世界最古」という歴史を使っている。8000年の歴史に思いを馳せるのは楽しい。

しかし、より面白くジョージアワインの歴史と食文化を理解するなら、個人的には「世界最古のワインであること」よりも​「最古の歴史を持ちながらも、ワイン世界におけるメインストリームにはならなかったのは何故か?」​という疑問に目を向けると良いと思う。その理由にこそ、現代のジョージアワインにも通ずる「生活の延長のワイン」といった特徴があるように思う。ここではそんな話を少し。​

紀元前6000年がどんな時代だったかと言うと、新石器時代がおよそ1万年前から始まり、狩猟や採集を中心とした生活から、自ら食料を生産する農耕・牧畜社会へ変わった頃だ。なぜこの頃のこの地域でワインが生まれたのかと言えば、おそらくブドウの野生種が自生していたこと、そして穀類が豊富でワインを生産する余力が生まれやすかったこととされる。ちなみに旧約聖書にもそれらしい話があって、「ノアの方舟」は洪水を逃れた後にアララト山(現在のトルコ東部。ざっくり同じ地域)に漂着し、ノアはそこで最初のブドウ畑を作ったとされている。

この頃の(そして現在も変わらない)ジョージアでのワインの位置付けは​「家で作って、家で飲むもの」​だった。同じ頃のエジプトやメソポタミアには王や神官がいて、ワインは選ばれた一握りの特権階級のみが飲むような飲み物だったが、ジョージアではそうではなかった。せいぜい、南の都市へ細々と売りに行く程度の流通しかなかった。

そんなジョージアに対して、​ワインの商品化を本気でやったのがギリシャ​だった。ギリシャはブドウ栽培に理想的な地中海性気候であり、そして海に面していて船で運べる。売る相手は、エジプトの王侯や南仏のガリア人のような「ワインが飲みたくとも作れない相手」だ。作れない相手には高値で売れる。少し後のローマ時代の記録には、ガリア人がワインの壺一つと奴隷一人を交換したという話まである。しかも地中海性気候は雨が少なく、麦は収量が低くて不安定だった。​麦を作るよりブドウを植えて売ったほうが何倍も儲かるのだから、ギリシャ人がワインに賭けたのは当然だった。​

ジョージアはその逆で、麦もブドウも作れて、困っていないから商売にする理由がなく、良くも悪くも「自分たちで飲む分を作る」農業だった。しかも北にも南にも山脈があり、主産地の東部は内陸で外に売りに出づらかった。ギリシャが大規模な商業的農業としてのワイン作りの道を切り開いたのに対して、ジョージアは自給的農業に留まった。

そして商売になった瞬間から、ワインは磨かれ始める。作り手が増え、飲み手が増えれば、比較され、値段がつき、隣の島より高く売るために味を良くする競争が起きる。実際、古代ギリシャでは早くもキオス島やタソス島のワインが銘柄として高値で取引され、壺には産地の刻印が押され、タソス島には売り方を定めたワイン法まであった。

そうしてワインを「文明化」したギリシャは、より様々なワイン文化を花開かせつつ、世界史の中心にもなっていくわけだが、そんな話はギリシャ編にて乞うご期待。​

話をジョージアに戻すと、ワイン世界史の中心の座をギリシャに譲ったジョージアは、その後も歴史の表舞台から外れ続けた。詳細は省くが(ソ連時代は「連邦の酒蔵」として量産を求められるなど)、その間ずっと残ったのが「家で作って、家で飲む」文化だ。​ギリシャ以降の西欧が「高価に売るための華やかなワイン」の道を進んだのに対し、ジョージアは8000年間「自分たちが飲むための生活の中のワイン」であり続けた。​

​この世界観が、現代のジョージアワインにも表れている​と私は思う。すなわち、華やかなパーティーで飲むようなワインではなく、もっと素朴で日々の生活の中で飲むようなワインの味がする。特にそれを感じるのが、ジョージアのワインとして有名なアンバーワイン(オレンジワイン)で、琥珀色の見た目と紅茶やドライフルーツ・東洋的な香りこそは華やかなものの、味はというとドライで後味が苦く、​ぶっちゃけ単体で飲んでもあまり美味しくないし、地味である​

アンバーワインがその真価を発揮するのは、チーズや豚肉のように旨味塩味油分がある料理とペアリングした時で、この時は適度なタンニンと酸味が料理との相乗効果でとても美味しくなる。しかし、ペアリングにおいてもやはり​フランスの赤ワインとチーズや肉を合わせたような華やかさはなく、どこかいぶし銀な渋さがあるというのが個人的な印象だ。​そしてアンバーワイン以外の、白ワインや赤ワインについても、ジョージアワインの全体の印象としてはこれを強く感じる。​

そして、​こういった素朴な印象は、ジョージアという国全体の印象でもある​。日本人に人気の旅行先といえばフランスやイタリアといった華やかな西欧諸国であり、美しい街並みに華やかな料理を楽しめるが、ジョージアはそういった西欧諸国よりも華やかさはなく、もう少し落ち着いていて、どこか懐かしく、生活感を感じるような街並み・食文化・国民性であった。Xで有名なジョージア大使のティムラズ・レジャバ氏も「ジョージアには音楽にワインなど様々な面で独自の文化がありますが、その特徴として、多くのものが普通の人の日常生活の延長にある点が挙げられます」「日本の文化に例えると、歌舞伎や文楽よりも盆踊りに近いというと分かりやすいでしょうか」と自身の著書で述べている。

正直なところ、多くの人がわかりやすく楽しめるのは西欧的な華やかさだろう。例えば初めての海外旅行だったら、フランスやイタリアに行った方が楽しめるかもしれない。初めてのワインには、フランスワインが良いかもしれない。

しかし、そういった西洋的価値観に疲れて心を落ち着けたい時、古い歴史と雄大な自然、人の温もりとノスタルジーに浸りたい時は、ジョージアにきて、ワインを飲むのが良いだろう。

ワイナリーの巡り方

ワイナリーのツアーはたくさん現地であるので、特に拘りがなければそれに参加すると良い。自分はちゃんと美味しいワイナリーを厳選して行きたかったので、大橋健一MW(日本在住唯一のマスター・オブ・ワインで、ジョージアワインのアンバサダーも務める方)にご紹介いただいたワイナリーをメインに自分で調べて訪問。基本的にアポ必須だが、直前に連絡してもなんとかなったりもする。

一大ワイン産地であるテラヴィに到着後は、近場にワイナリーが固まっているので、Yandex Goを使ってワイナリー間を移動できる。それ以外のエリア(今回はカルトリ、マナヴィ)については、ワイナリーが基本的に辺鄙な場所にあるので、公共交通機関は使えず、Bolt / Yandex Go(ジョージア版のUber。Uber自体は無い)すらも使えないところも多い。ということで、レンタカーを借りるか運転手を車ごとチャーターするかの二択。ジョージアは運転手を雇うのが安く、1日雇って1.5万円程度だったので、今回はチャーターを選択。GoTripというサイトで予約。好きな時間に好きな場所に移動できて便利だった。​

1日目 - ジョージア入国、トビリシ周辺

羽田発の深夜便、カタール航空ドーハ経由で昼頃に首都トビリシ到着。宿は旧市街のワイン専門ブティックホテルVinotel。到着したら即ウェルカムスパークリングワインをもらって幸先が良い。

適当にトビリシを散策して、ヒンカリを食べて就寝。

2日目 - カルトリ(ムツヘタ・ムティアネティ州)

今回の専属ドライバーのGiorgiと合流して、トビリシから北西に1時間くらいにあるカルトリ地方のワイナリーを巡る。観光もしたけど省略。

ちな、Giorgiはジョージアで一番多い男性名で、キリスト教の聖人「聖ゲオルギオス」から取られている。「ジョージア」という国名も聖ゲオルギオス由来だと現地ではよく言われる。国旗も聖ゲオルギオス十字に小さな十字を4つ足したもので、エルサレム十字とほぼ同じ図案。これ豆な。

シャトー・ムクラニ - ムツヘタ

今回旅における唯一のシャトーであり、ジョージア初のシャトーワイナリー。1878年、王家の分家のイヴァネ・ムフランバトニ公がボルドーとシャンパーニュで醸造を学んで帰国し建てたもの。

当日は結婚式をやっており更に華やか。なのは良いが、館の正面入り口が施錠されており、また結婚式の参加者に「ワイナリーはあっちよ!」と嘘情報を掴まされ、広大な敷地をひたすらに歩き回った。まあ綺麗だったので良いが…。​

ワインツアーではジョージアワインの歴史からムクラニの歴史、製法など手厚く説明。今回の中でも一番手厚かったんじゃないかな。最初がここで良かった。日本の漫画好き、かつクラシック音楽や小説など各ジャンルに詳しい才女が説明してくれて面白かった。「このワインはプロコフィエフみたいな味ね〜」とか言ってみたいな?

このシャトーはボルドー仕込みのヨーロピアンスタイルを大規模に造る「近代」の代表格。テイスティングでは白2種類、赤2種類を飲んで、どれも普通に美味しい。日本で飲むジョージアワインは、クヴェヴリで作ったアンバーワインばかりなので、普通の白赤を飲むのは新鮮。8000年も歴史があるんだから、そら西欧式のワインも上手に作れるわな。

お土産にシャルドネ2022を買って40ラリ(2400円)。クオリティからすると大分安い。もっとランク高いワインも飲ませて貰えば良かったなあ。ツアーは丁寧、敷地内は美しいのでとりあえずオススメ。

Iago’s Wine - ムツヘタ

大規模で近代的だったムクラニとは対照的に、家族経営小規模で伝統的・オーガニックな作りのIago’s Wineへ。大橋MWの推薦。畑は2haだけ、品種は地元のチヌリ一本槍で、2005年にジョージアで初めてオーガニック認証を取った蔵。​

ワインテイスティングのおつまみが一番豪華。果物類、ナッツ、チーズ、ハム、パン、簡単な惣菜、色々ある。代わりにワインの種類は少なめ。これ幸いということで、ペアリングを色々試してみる。アンバーワインは紅茶やドライフルーツ、ハチミツなどのアロマがあって甘やかそうな香りの印象がありつつ、味はほんのりタンニンの苦味があってビター。香りの印象と味が結びつきづらく、また単体で飲み続けて美味しいようなものではない(個人の感想)。しかしこれをチーズのような旨味塩味と油分がある食べ物と一緒に合わせると、ほどよいタンニンと酸味がマッチして美味しい。美味しいが、フレンチの華やかなペアリングとは違って、料理と合わせてもやっぱり地味というか、どこまでも落ち着いた世界観。煌びやかな外食フレンチとかじゃなく、生活の中のワインという感じ。この印象は最終日まで変わらなかった。

タンニンが比較的強いルカツィテリはチーズなどが合うが、キシのようなよりトロピカルな味わいの品種だと、フルーツもまあまあ合う。ドライフルーツとチーズを合わせて、レーズンバターサンドみたいにして食べると抜群に合う。

家族経営で忙しいんだろうな〜という雰囲気。数分程度のツアーを息子がやってくれたが即解散。こちらからもっと色々質問できたら盛り上がれた気がするが、あんまり質問もできず。質問をするための解像度が足りないなあ。ここのワイナリーの推し品種であるチヌリのアンバーワインを購入。価格は忘れた。

3日目 - カズベキ

この日はワイナリー見学をお休みして、ロシア国境近くのカズベキへ。「天国に一番近い教会」とされるゲルゲティ教会を見に行った。標高2170mの丘の上に立つ14世紀の教会で、背後には5054mのカズベク山。侵略のたびに国宝を隠す場所だったらしい。ちなみにギリシャ神話でプロメテウスが火を盗んだ罰として鎖で繋がれたのはコーカサスの山で、ジョージアの伝説ではそれがまさにこのカズベク山ということになっている。ワイン以外でもギリシャと縁がある。

ゲルゲティ教会も大変良かったし、道中の大コーカサス山脈を通る軍用道路(トビリシからロシア側まで抜ける峠道)をひたすらドライブするのも気持ち良かった。カズベキで宿泊して朝日や夕日、星空を見るのも楽しそう。オススメスポット。

4日目 - マナヴィ(カヘティ州)

トビリシのホテルをチェックアウトし、トビリシから東の一大ワインエリア、カヘティに移動。この日は道中のマナヴィのワイナリーを巡った。

Ethno - マナヴィ

こちらも大橋MWのオススメ。2012年に金融・通信・医療・不動産出身の友人2人が設立したという小規模で実験的(多分)なワイナリー。

「ワイナリーがある村には住所がないから、近くまできたら電話してくれ!」と事前連絡をもらい、果たして辿り着けるんだろうか…とドキドキしながら向かう。案の定自力では辿り着けず、ドライバーのGiorgiに電話してもらおうとすると、​なぜかGiorgiが意地になってGoogle Mapの航空写真からワイナリーを探そうとする​。Giorgi、俺と同じく電話嫌い系男子の可能性がある。

一通り迷って観念して電話をかけると「今どこだ?何が見える?バスケットコートが見える?ああ、その家の庭の向こうに俺のワイナリーが見える!丘の上のコンクリートだ!見えるか?そこまで案内する!電話を切らずに通話してくれ!」そんな調子でオーナーのLadoが案内してくれる。ようやく辿り着いてLadoに出会えて謎の感動。​

謎に盛り上がった熱量のまま、最近稼働し始めたばかり?のマナヴィのワイナリーを案内してくれる。Ladoの説明から伝わる熱量、まだ運び込まれて間もない各種の器具の様子からワイン作りのリアルな肌触りを感じられる。そして目の前に広がる葡萄畑が素晴らしい。

いよいよテイスティング。​なんと奥さんが昨晩料理を手作りしてくれたそうで、手の込んだアミューズを準備してもらった上に、さらに箸まで用意してくれた。​ジョージアでは「客人は神からの贈り物」と言われるくらい、客人をもてなすことに命をかけるらしいが、これがそういうことか…!

​ワインの味も今回旅で一番レベルが高い!​いや、ここまでの丁寧なもてなしと、説明の熱意による先入観もあったかもしれないが。ジョージアワインらしい、飾らなさ、日常の酒らしさがありつつも、しかし洗練されピントのあった味。今回の旅の中で比較すれば、最もseriousで、ガストロノミックな味。今年が初リリースだという貴重なManavi Cuvéeを飲ませてもらった他、特にサペラヴィの赤ワインが素晴らしく、長期熟成したら果たしてどんな味になるんだろうかとワクワクするほどの出来。

白、オレンジ、赤それぞれ1本ずつ買って帰ろうかな〜とLadoに伝えたところ、​なぜかそれぞれ4本で計12本を箱で渡され、しかも無料。テイスティング代も無料。​いやいやいやwww、と固辞して、ちゃんと代金を払おうとするものの「大橋MWの紹介だからな!」と気前よく渡してくれる。だったらまあ、日本でEthnoを宣伝することで恩義に報いるか…!と納得して受け取ることに。

がしかし、ホテルに到着後、「12本もどうやって持ち帰るんじゃい…」と冷静になりました(結局、追加のスーツケースを購入)。

人柄も味も、なんかすごくファンになってしまったワイナリーだった。熱意と技術、歴史と最先端のセンスをもったEthnoを皆様ご贔屓にどうぞ(宣伝)。​

Giuaani - マナヴィ

Ethnoと同じ村にある、年産40万本の大手。到着がひたすらに遅れたものの「No Problem!!」と気さくに対応してくれる。優しい。

ここではまずルトヴェリ(収穫祭)体験ということで、収穫と圧搾を体験。収穫、単に葡萄の枝を切っていくだけだと思いきや、葡萄の房が複数絡みあってどこを切断すればいいかぱっとわからないものが多く、意外と難しい。そして暑い。手作業の収穫は大変だなあ、、なんて月並みな感想。なぜかbluetoothスピーカーをスタッフの可愛い女の子が持参しており「好きな曲かけていいわよ!」とのことで、せっかくなので「Japanの最先端を聴かせてやるぜ!」と言ってCANDY TUNEとCUTIE STREETを流しました。カオス。葡萄を踏みつけるのはちょっと罪悪感があるが慣れる。意外と(意外でもなんでもないのだが)踏みつけるだけで、圧搾がちゃんとできるんだなあ。

収穫体験の後は男性スタッフに交代してワイナリー見学。そろそろ説明される話が大体同じになってきた。ジョージアワインの歴史やらクヴェヴリの話やら。

テイスティング。まずペットナットが美味しい!ペットナット、すなわち田舎方式とも呼ばれる単純な作り方にしては、非常にきめ細やかな泡で洗練された印象。思わず「ペットナットなのになんでこんなに泡がきめ細やかなの?」と質問したところ、「ペットナットは泡がきめ細やかなんだ」と回答される。トートロジー回答。ううむ。

その他ワインも普通に良かったが、ここではペットナットを購入。ルトヴェリ体験が70ラリ、テイスティングが4杯で35ラリ、ペットナットいくらか失念。

5日目 - シグナギ(カヘティ州)

「天空の街」「愛の街」と呼ばれるシグナギ。ホテルからの街の様子がまさしく天空の街で良かった。愛の街と呼ばれる理由は、街の中心に24時間365日開いている婚姻登録所があり、思い立ったら深夜でも結婚できるからだそうな。

Pheasant’s Tears - シグナギ

シグナギの街の中のワイナリー兼レストラン。2007年にアメリカ人画家のジョン・ワーデマンと地元の農家ゲラ・パタリシヴィリが始めた蔵で、ジョージアの自然派ワインを世界に知らしめた立役者。ワイナリー名は「雉の涙」の意味。「想像を超えるほど素晴らしいワインだけが、キジを喜びで泣かせることができる」というジョージアの古くからの言い伝えに由来。今回はレストランに訪問。

ワインがとてもフレッシュ、微発泡。自分の好み。一番素直に飲めたのがここかも。素直に美味しい。それでいて、ジョージアのアンバーワインらしいほんのりとした渋味、旨味があるので、料理にも合う。通常のアンバーワインよりも、かなりライトに合わせられる。

ここで食べたナス、パプリカ、水切りヨーグルト、バルサミコ酢の炒め物も大変美味しかった。美味しいし食べやすいけど、自分は今まで食べたことがない、ジョージアの食に求めていた味。

Okro’s Wines - シグナギ

街の高台に向かう坂の途中にあるワイナリー。亜硫酸も何も足さない完全な自然製法を謳っていた。全体的に悪くないが、他のワイナリーが良かった分、ちょっと見劣りした。良くも悪くもナチュラルで野生味ある方向性。6杯もくれたので、ブラインドテイスティングの練習というか、品種特性の勉強によかった。Sister’s Winesという、オーナーの妹が作っているラインが、女性らしさというか飲みやすさがある。屋上のテラスでの試飲は見晴らしが良いのと、白、アンバー、赤とグラデーションが綺麗なテイスティングをさせてくれるのが良い。

シードルのラベルがニュートンなのがお洒落(林檎だけに)。オーナーが物理学者からワインに転身した人らしい。

6日目 - テラヴィ(カヘティ州)

Teleda Orgo

こちらも大橋MW推薦。「若い醸造家たちのゴッドファーザー」と呼ばれる醸造家ゴギ・ダキシヴィリの一家の蔵。ロゴが印象的。Teledaはテラヴィの古名で、Orgoはクヴェヴリの蓋を指す古い言葉。日本でも飲んだことあった。

ここだけテイスティングがやや特殊。普通のテイスティングは存在せず、240ラリでボトルを5本購入して、その場で飲める形。テイスティングとしてはだいぶ高いが、まあとはいえせっかく来たのでGo。ひとつ48ラリ、3000円弱と考えると、クオリティ的にはだいぶお得。​

スパークリングがすごくレベル高い。ムツヴァネの2018。クヴェヴリからの伝統的方式。ワイン業界における「伝統方式(Traditional Method)」とは「シャンパンを作る際の瓶内二次発酵の製法」のことを指すのが一般的だが、ジョージアにおいては「クヴェヴリを使った製法」のことも指すので、「伝統方式で作ったベースワインを伝統方式で二次発酵」とか言い始めて面白い。味は熟成のコクはありつつもさっぱり、酸味、果実感。普通に爽やか系のシャンパンっぽい。クヴェヴリを使う意義はどこにあるのか聞いたが、クヴェヴリと通常のタンクの製法の違いを説明されて、意義を答えてくれず。こちらの英語力も低いが、向こうも低そうである。

白のキュベはキシ、ムツヴァネ、ルカツィテリ。樽が効いた普通のヨーロッパ式の白というところ。レベル高いな。

残りはアンバーワインのルカツィテリとキシ、サペラヴィという定番コース。レベル高い、家族経営と聞いてたが全然それを感じない洗練された味。とはいえ品種特性通りの感想以外なし。残ったワインはギリシャに持っていきます。

Shalauri Wine Cellar

こちらも大橋MW推薦。2013年に友人4人で始めた蔵で、クヴェヴリ43基。見晴らしの良い斜面に葡萄畑が整然と並んでおり、その中に可愛らしい建物が立っていて素敵。

若い女の子と、オーナー?らしき男性が出迎えてくれる。Orgoでもらったワインボトルの荷物を下ろすや否や「それはなんだ?ワインか?空いてるなら飲ませてくれ」と言われて、その場で品評会が始まってだいぶ面白い。

丁寧にセラーを見学させてもらった後に試飲。とても美味しい!レベル高い!

どれも単純に美味しいというか、飲んでいてハッピーになる味。ややこしいこと考えず美味しく、でもちゃんとレベルが高い。今回の旅での個人的ベストワイナリーはEthnoとここが二強。Ethnoは比較的シリアスな味、Shalauriはハッピーな味の方向性でのレベルの高さという印象。​

アンバーワインはルカツィテリ、キシ、ムツヴァネと3種類を試飲。ルカツィテリが自分の中でのジョージアアンバーワインの基準で紅茶やドライフルーツのアロマ。キシはよりトロピカルで飲みやすい、ムツヴァネは控えめな印象。オーナーはムツヴァネが好きらしい。

赤ワインはサペラヴィ2019と2021。2019は更に熟成させたら素晴らしい味になりそうな期待をもてる、良い味。そして2021は更にポテンシャルを感じるが、今飲むとまだ若い。10年後に飲んでみたいな。

チーズとパンもとても美味しい。パンはショティというカヘティのパンで、トネという壺型の窯の内壁に貼りつけて焼く。ナンの親戚。単に美味しい。耳の小麦の風味の良さと、中の適度な柔らかさ。チーズは適度にしょっぱく旨味。

こちらも大橋MWの名前を出したら、「Kenichiの友人なら無料だ!」とテイスティングを無料にしてもらう。もはや大橋MWに足を向けて寝られない。赤白オレンジと3種類ボトルを購入。

いやあ、良いワイナリーだった。味もよく、人柄も温かいと好きになってしまうね。

7日目 - テラヴィ(カヘティ州)

Schuchmann Wines

ドイツ人実業家ブルクハルト・シュフマンが2008年に設立したワイナリー複合施設。ホテル、ワインスパ、レストラン、プールなどがあって豪華。予約が空いてなくて泊まれなかったが、ここに泊まるのも良さそう。ちなみに醸造責任者は前日にOrgoで訪ねたゴギ・ダキシヴィリ本人で、Shalauriのコンサルタントも彼らしい。テラヴィ周辺、どこに行ってもゴギ。

丁寧にツアーもしてもらったが、この頃になるとだいたいの説明が既知の内容。これまでのツアーで知った内容をもとに雑談して盛り上がる。

テイスティング。ルカツィテリ白は、個人的にはヴェルメンティーノっぽい?レモンのような酸味と、ほろ苦さ。冷涼、シャブリとかのミネラルとか…?でもない?アルバリーニョかも。塩味ある。

ルカツィテリのアンバーはかなり飲みやすい系。ノーマルな美味しさ。味のベースは変わらず、紅茶、ドライアプリコットとか。

赤ワインはサペラヴィ。今回の黒葡萄品種は全部サペラヴィだったな。サペラヴィは果肉まで赤い珍しい品種で、名前も「染める」に由来するそう。カベルネ・ソーヴィニヨンのような濃さ、色の濃さ、香り、黒系果実とピラジン(ピーマンっぽい青い香り)がありつつ、チャーミングさもある。味も同じく。香りはブドウジュース感。高い酸味がジューシーで、カベルネよりもサンジョベーゼ的な、生き生きとしたジューシーさ。コーヒー、チョコレート。​

普通に良かったが、7日目にして流石にもう驚きとかがないかなあ、というところ。

Musaifi(ワインバー)

テラヴィの街中にあった雰囲気良さそうなワインバーに突撃。店名はジョージア語で「よもやま話」の意らしい。ソムリエが丁寧に説明してくれて、気になるワインは無料で少量試飲させてくれる。ソムリエの人柄の良さは今回で一番。​

カヘティ名物の豚肉のバーベキューに合わせてペアリングを頼んだところ、キシのアンバーワインを合わせてくれた。キシはトロピカルな紅茶のアロマの香り、味は穏やかな渋みと旨味の印象。確かに豚肉に合う。赤ワインで合わせると、良くも悪くもベリーとか黒系果実とかで華やかな印象になるペアリングのところ、アンバーワインだともっと落ち着いたペアリングで、旨味滋味を補強する感じ。

やっぱりこれがジョージアに感じる印象だと思う。すなわち、派手さがない。落ち着いていて、しかし料理によりそって引き立てるような役割で、しかし引き立てるとは言っても、舞台の上でスポットライトを当てるような引き立て方ではなくて、やはりじんわりと寄り添う優しさ。どこまでいっても、西欧的な華美さはなく、生活の中での小さな幸福を愛でるような、そんな方向性のワインであり、国民性のように思う。


ということでジョージア編はここまで。次は、ワインを「文明化」した側のギリシャ編(予定)。

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Katsuma Narisawa

Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.

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