mærge / 南青山
2026年大注目のグランメゾン

2026年に大注目のグランメゾン、mærgeへ訪問。開業後わずかな期間で1ツ星を獲得し話題となった他、「久々のグランメゾンらしい店の誕生」とのことで界隈が盛り上がっており期待大のお店です。
オーナーシェフは白金「La Clairière」で一つ星を獲得した柴田秀之さん。ソムリエは「乃木坂しん」でゴ・エ・ミヨベストソムリエも受賞している飛田泰秀さん他、有名店舗出身の豪華布陣。
インタビューを拝見すると、柴田さんはシェフというよりは起業家の如きビジョナリーな考えを語っており、しっかりと投資資金を集め人員・店舗・マーケティングなど各種に初手からフルベットしている様子は、成熟した2周目起業家のスタートアップ企業の勢いと安心感を彷彿とさせます。
時間ちょうどに店舗に到着すると、寒い中スタッフの方が外で出迎えてくれる。こういうところから既にグランメゾンらしさを感じるな。
店内は照明も控えめで落ち着いた雰囲気、通常席は円卓が5つほどに個室が一つ。思ったよりはこじんまりとした印象。

しかし今回の我々は「ダイレクトキッチン」なる特別席を予約。「キッチンからダイレクトに調味料や食材の味見など、その日ならではの特別な体験をご提供いたします」との説明にワクワク。
背が低めの専用扉を潜ると、マジでありのままの厨房が目の前に広がる、想像以上にダイレクトなキッチン席。ここまでそのまま厨房だとは思っていなかったw

四角く切り抜かれた視界いっぱいに動き続ける厨房は、まるで一枚のスクリーンに映し出された映画のよう。もはやリアルなグランメゾン東京を目の前で鑑賞しながら食事をするような体験。
…というか本当にグランメゾン東京の登場人物みたいなスタッフが多く、松井萌絵かのようなショートカットの美人なパティシエから、芹田らしくずっと皿洗いをしてる方から、NG食材についての注意喚起を何度も繰り返す若手イケメンシェフやらが忙しなく動いている。グランメンゾン東京やフェルマーの料理を見直してからくるとより楽しめるでしょう。
我々としては俄然テンション上がりまくり空間だったわけだが、目の前で普通にスタッフ間の指示がそのまま垂れ流されているなど、お洒落な雰囲気ではないのでやや注意。デートや落ち着いた食事が目的なら通常席にいくのが良さそう。キッチンの白い蛍光灯のおかげで料理の写真もあまり映えずで残念。
写真映えはイマイチだったかな。みかんかわいいさて乾杯。ダイレクトキッチンのコースはワインペアリングつき。テーブル担当の三沢ソムリエより
「最初にシャンパンをご用意させていただきますが、Krugでよろしいでしょうか。もう少し軽いものもありますが」
よろしくないわけがなく、まずはKrugからスタート。当然のようにレベルの高いシャンパンが提供されると嬉しい。


アミューズ。荒間鶏とかブーダンノワールとか。どれも凝っているかつ非常に美味しく、また出来立てアツアツな一品。筍を割るとスープがでてくるかぐや姫的な演出も面白い。



お次はワゴンサービス(ダイレクトキッチンなのでワゴンではないが)。流麗なワゴンサービスは、グランメゾンならではの楽しみ。
「キャレドブール」という四角く焼き上げたバターが香るブリオッシュにキャビアやリエット、チーズなどの具材から好きなものを載せていただく一品は、なんとキャビアも盛り放題という太っ腹っぷり。テンションが上がらないわけがなく、恥を隠さず「全部乗せ、全マシマシでお願いします」とオーダー。
ブリオッシュとキャビアその他の暴力的な美味しさに厚みのあるKrugの泡を合わさって、もはや1回表に三打席連続満塁ホームランといった様相。素晴らしすぎるな。





お次は「洌海」の新岩のりのスープ。シンプルなスープだが、岩のりの風味が非常に濃く美味しい。「洌海」とはそのシーズンで一番寒い海のことだとか。合わせて、そのコンソメを使ったゼリーの上にアオリイカ、うど、りんごのスライス。
ワインペアリングはここからスタート。まずはボルドーのペサック・レオニャンのソーヴィニヨン・ブランから。控えめでほのかな草っぽさスモーキーさと、まろやかなコクと旨み・ワックスのニュアンスが岩のりとアオリイカに合う。ボルドー白ってあんまり好きじゃないのだが、こういう合わせで良いワインを飲むと流石に美味しい。



山菜のリゾット。8時間蒸した鮑といただく。鮑のリゾットなんて美味しいに決まっているわけだが、普通の美味しさに山菜のほのかな青さや苦さをプラスして、ほんのり爽やかで複雑な方向性。好き。
合わせるワインはオーストリアの最古のワイナリー、Schloss Gobelsburgの
TRADITION HERITAGE Cuvée 3 Years。グリューナー・ヴェルトリーナーといえばオーストリアで有名な葡萄品種(最近授業でやったばかりの知識披露)。お味の第一印象は樽シャルドネっぽいクリーミーさだったのだが、ほんのりと柚子っぽいニュアンスもあり山菜とマッチする。オーストリアワインも美味しいね。


パンは小ぶりでベーシックな感じ。もちろん美味で御座います。

エクストラコンテンツということで、オリーブオイルの食べ比べもいただいたのだが、オリーブオイルの解像度が低いのか既に酔っ払っているのか、そこまでの違いを感じられず。いや違うのは分かるけど。ううむ。

河豚の唐揚げと、白子と黒トリュフ。河豚は刺身よりも火を通した方が旨みがでて好き。白子と黒トリュフが美味しいのは自明。
ワインはピュリニー・モンラッシェの白。はい、美味しいです。



お次はオマール海老のイヴレス。中華料理における「酔っ払い海老」を再構築したもの。通常だと紹興酒を使うところ、シェリーなどの酒を使っている。普段はボタンエビだそうだが、この日は特別にオマール海老にしたとのこと。嬉しい。島原そうめんも美味しい。
ワインはプロヴァンスのロゼと、アモンティリャードのシェリーのダブルペアリングでいただく。穏やかに合わせるにはロゼが良いが、イヴレスのアルコール感に合わせるならシェリーくらい強い風味が合うね。良い。
ソムリエの三沢さんとペアリング談義にも花を咲かせる。「コース料理におけるペアリングはオーケストラのようなもので、波(コントラスト)があるべき」とのお話。わかるなあ。


お次は鰆。目の前で美しく盛り付けしてもらう。メニューに書いてあるのは鰆なのに、デカデカとしたフォアグラが最後にのって完成。見せ物としてのフォアグラではなく、あくまで最高の料理を構成する1要素としてフォアグラを使う方向性、好きである。
お酒はコート・ド・ボーヌのButterfieldという生産者のピノノワール。Butterfieldさんが作っているらしく、ほんのりバター感とキノコっぽさのあるピノ。鰆の柔らかく繊細な味だけでも美味しいが、そこにフォアグラの暴力的だが絶妙なバランスの脂がのってくるとまた美味しい。はあ、美味しいなあ。




ついでに、エクストラテイスティングということで焼く前の鰆を塩とオリーブオイルで食べ比べもいただいた。お酒は惣誉。ペアリングででてきがちな印象。美味しい。

メイン前のグラニテ。日本酒はIyasaka Sparkling。これ美味しいよね。Sanmiでもでてきた記憶。


メインの前に塩の食べ比べというコンテンツ。まあ面白いのだが、正直もう酔っ払って楽しくなっており、集中力も雲散霧消という体たらくであり「それぞれ違いますね」程度の感想しかない。うーむ。まあ仕方ない。

ラストは5種類の肉から選べる形式。我々はイチオシと言われた青首鴨のサルミソースをチョイス。内臓・キノコの薪焼きもついてきてお得。ジビエらしい滋味深さと、丁寧な火入れを感じる。
赤ワインはブルゴーニュのグルナッシュと、ローヌはコートロティのシラー、ついでにサービスでピノもいただいてトリプルペアリングでいただく。どの赤と合わせるかで鴨の印象も全く異なって面白い。グルナッシュだと果実感ありパワフルな印象、シラーはもっと定番な土っぽさとタンニンでの合わせ、ピノだとエレガントな合わせ方。



デザートはやや控えめで、全体的にそこまで量が多くなく丁度良い量という感想。
アルコールのラストはシャトーディケムで締め。はい優勝。


最後に謎の木からぶら下がったバニラビーンズを収穫していただく。若干謎なパフォーマンスだが、ここまでくるともうなんでも面白く楽しいですはい。




19時スタートだったところ、じっくり楽しませてもらって23時すぎにようやく退店。
いやあ、料理はもちろんのこと、ワインやサービス、雰囲気や演出など全てが重厚かつ最高峰のレベルであり、前評判に違わぬ注目度ナンバーワンのグランメゾンといった印象だった。全てにおいて、モダンで最先端でありつつ、王道でクラシックな「分かりやすい良さ」を兼ね備えていた。これはすぐ三つ星になりそう。今後のご活躍も楽しみにしております。

Katsuma Narisawa
Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.
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