Maison Lameloise / Bourgogne
洗練と親しみやすさが同居する、ブルゴーニュならではの三つ星レストラン

Maison Lameloise は、ブルゴーニュ南部・シャニー村にある1921年創業の老舗ガストロノミー。1979年にミシュラン三つ星を獲得して以来、現在に至るまで星を維持し続けており、ブルゴーニュを代表するグランメゾンのひとつ。現在はMOF(フランス国家最優秀職人章)受章シェフのエリック・プラザン氏が料理を手掛け、土地の食材と伝統を軸にしながら、現代的で軽やかな表現へと昇華した料理を提供しているとの前評判です。
今回はせっかくワインの聖地たるブルゴーニュを旅するのなら、そのトップレストランを知っておこうという気持ちでディナーに突撃しました。
ちなみにコースは€335でおよそ6.3万円、5杯ペアリングが€235で4.5万円。自分の人生でHAJIMEやにい留に次ぐ出費ですが、これもまた人生経験と自分に言い聞かせて伺います。全部円安が悪い。

「ムッシュー、アペリティフ(食前酒)はいかがなさいますか?」フランスに来てからというものの、ムッシュと呼ばれることが多く若干こそばゆい。シャンパンにするか悩んだが、せっかくブルゴーニュにいるのだしクレマン・ド・ブルゴーニュをオーダー。
クレマンはシャンパンと比べて、より爽やか、ピュアなリンゴの蜜の味が強い。肩肘はらないピュアな世界観がこの店やブルゴーニュに合っているかな。


アミューズ。ロリポップと言われてでてきたのは、フォアグラをココアチョコレートでコーティングした可愛らしい棒付きキャンディ。うおお、、、美味しい。。フォアグラの旨みと脂肪、チョコの甘み、トッピングの適度な酸味と塩味でもう最高。フォアグラはこれくらいの少量を楽しむのが胃がもたれずちょうどいいなあ(前々日に大量のフォアグラで胃が破壊された人)。

その後のアミューズもどれも非常に良い。旨味、甘味、酸味、塩味を最高のバランスでまとめつつ、季節の野菜や魚、チーズ、サクサクしたタルト生地で食感も楽しく軽やかであり、最高の立ち上がり。見た目もどれもかわいらしい。ホウレンソウのタルト、鱒(trout)のタルト、サワークリームのシューと赤蕪、エスカルゴとタコ。


アミューズが終わった時点で、メニューが提示される。インスタントコースとフルコースがある模様。フランスに入ってから胃の調子が悪く、少し悩みながらも、ここはまあいくしかないでしょうということでフルコースでGoです。ペアリングもオーダー。

二杯目からペアリングがスタート。まずはP&M JacquesonのRully 1er Cru "La Pucelle”。リュリー(Rully)はブルゴーニュの南、コート・シャロネーズ地区の北側、このレストランがあるシャニー村のさらに南にある良コスパワインであり、こちらはRullyを代表するドメーヌのプルミエクリュ。果実感、クリーミーな樽感でレベル高くて良い。フランス国内で購入するとボトル1本€35=6650円程度。
※いかんせんブルゴーニュの高級ワインに縁がなく知識もなく、後学のため今回は価格をメモしていきますがご了承ください。


料理の1品目はムーレット風味のカスタード。ウフ・アン・ムーレットは赤ワインソースで煮込んだブルゴーニュの伝統的なポーチドエッグ料理で、これを再構築したものの模様。ウズラのコロッケ的な。

三杯目、ボーヌ生まれの新進気鋭少量生産のワイナリーAdrien LattardのPuligny-Montrachet 2023。いや〜美味しい。2杯目のリュリーも十分レベルが高く感じたが、こちらの方が圧倒的に洗練された印象を受ける。繊細さ、緊張感、ミネラルとバランス、白い花とフレッシュフルーツ。価格はおそらく€200=3.8万円ほど。


料理はラングスティーヌ(手長海老)のマリネ、クリスピー。クリスピーの衣はポン菓子のような懐かしさのある風味。マリネはタルタル風の仕立て、リンゴのジュレのラビオリ、セロリとキャビア。マリネ感はあまりないというか、何を食べてるかよくわからないが(解像度よ)、とにかく美味しい。こういう、同じ素材を2種類の仕立て方で出すのがこの辺の高級フレンチでの定番の模様。
当然洗練されているし、高級食材のキャビアを使ったりもしているが、ポン菓子のニュアンスなどからも、肩肘はらない気軽で親しみのある方向性を感じる。

四杯目、Domaine Alex MoreauのChassagne-Montrachet 1er Cru "Les Grandes Ruchottes" 2021。2021年が史上最大級の霜害だったのもあり、コレクターアイテムなようで€350=6.5万円ほど。
大変にお恥ずかしながらピュリニーモンラッシュとシャサーヌモンラッシェの味の違いはあまりわかっていないレベルだったが、ピュリニーが繊細さと緊張感のスタイルだったのに対して、こちらのシャサーヌはより複雑でボディがあり、丸みとミネラルの方向性。こちらも大変に美味しい。

マトウダイ(John Dory)とホワイトアスパラガス。ローストしたオレンジ、マスタードとヴェルヴェーヌのサバイヨンソース。ホワイトアスパラガスの飾らない素材の味をベースとしつつも、サバイヨンソースとオレンジの酸味とロースト感が組み合わさってうおお、なんだこれ。美味しい。



こちらも2皿目があり、マトウダイのニョッキ。貝柱とニョッキの中間みたいな味。

やはり全般的に、複雑で洗練された最高級フレンチだけど、どこか素朴で家庭的な雰囲気でもあるというか。パリの三つ星とは違うスタイルなのだろうし、「素朴だけど洗練されたフレンチ」という矛盾は、DNAにフレンチが刻まれていないと作れないものであり、日本のフレンチでもありえないのだろう。ブルゴーニュの三つ星レストランである、という印象を強く感じる。
五杯目はムルソー。はい最高。濃厚。完璧。至福。優勝。超美味しい。
…と、ワインの名前も特によく分からず美味しく飲んでいたのだが、こちらは実は「ムルソーの王」と呼ぶべきコシュ・デュリのワインであり、ボトル1本27万円相当のワイン。超高級ワインであることに全然気づかず飲んでいた……(Coche-Dury / Meursault 1er Cru "Les Caillerets” 2022)。コシュ・デュリという名前くらいは一応知ってたのだが。恥ずかしい。
このクラスのワインであれば、より真剣に飲むべきだったと少し後悔。知識なし先入観なしで飲むのが正しいような、事前知識をいれてその値段なりの緊張感をもって飲むべきなのか、悩ましいものだが。

高級ワインについて無知で恥ずかしいところだが、まあ良い機会なのでお勉強。
改めて、ムルソーにおけるNo.1 ワイナリーがこちらのコシュ・デュリ。ロバート・パーカーから100点満点を与えられたブルゴーニュの白ワインは、DRCの『モンラッシェ』と、コシュ・デュリの『コルトン・シャルルマーニュ』のみ。今回飲んだレ・カイユレ(Les Caillerets)はコシュ・デュリの中では最も生産量の少ない1級畑で、ふくよか・果実先行なスタイルでファンが多いのだとか。「ガンパウダー(火薬)」と「ポップコーン」の香りが特徴。
"infanticide"(幼児殺し) とも呼ばれるほどの長期熟成型のワインであり、今回2022年を今飲むのはちょっと早かったのかも。
料理はモリーユ茸とエスカルゴ、トリップ(牛の胃)。仔牛ジュ、ソレルとタラゴン(ハーブ)、マスタードシード(粒のままのマスタード)。それぞれ若干の癖がある素材であり、フレンチ上級者向けの一品という印象。
アスパラガスも然り、それぞれブルゴーニュの春の素材であり、異国の季節を感じられて良い。コシュデュリとのペアリングも、モリーユの燻したような土香、エスカルゴや仔牛ジュの旨みと濃厚さ、ハーブの爽やかさと酸味がパーフェクトにマッチ。大変良い。ブルゴーニュのテロワールを感じるマリアージュ。


2皿目はトリュフとの合わせだっけかな。こちらも美味。

合間にマッシュルームのカプチーノ仕立て。旨みが濃いが、濃すぎない。カプチーノはLe Pre Catelanでもいただいた記憶。フレンチの高級レストランだと定番なのかな。

ラストの1杯はDomaine ArlaudのChambolle-Musigny 2023。スミレ、ラズベリー、バラ、シルキーな質感にエレガンス。€70=13000円ほど。
この時点でお腹いっぱいになっていたのもあったが、正直これは特別美味しいとは感じなかったなあ。普通にレベルが高く美味しい…くらいの感想。これだけは残してしまった。


料理は乳飲み仔羊のロースト。通常の仔羊より、乳飲み子羊(=生後2-6週間)の方が遥かに淡白・繊細で甘いそう。もちろん美味しいのだが、そこまでの驚きはないのと、胃の調子が不安で少し残してしまった。基本的に自分は肉料理で感動しながちかもしれない。
シャンボール・ミュジニーというコート・ド・ニュイで最も女性的とされる村のワインに、春の繊細な仔羊料理は悪くないが、個人的には子羊とのペアリングにはもう少しスパイシーさや甘やかさがあったほうが好き。クリア、エレガンスの方向性すぎたかな。ちなみに、翌日に自転車でシャンボール・ミュジニー近くのグランクリュ街道を爆走しましたが美しくて良い場所でした。



フロマージュ。自分はお腹いっぱいで頼まなかったのですが、コースに含まれていると勘違いした同行者がごく少量だけ頼んで6000円課金されてました。ヤバい。


デザートの前に口直し。

柑橘系のデザート。本当はここで甘口ワインを合わせる予定だったが、胃の調子が不安だったので断ってしまった。健康になりたい。


全般的に、洗練された非常に美しい最高級のフレンチではありつつも、どこか砕けたカジュアルさがあり親しみやすく、モダンすぎないフレンチであり、とっつきやすかった。良い意味での家庭的さがあり、コテコテすぎず、最後まで美味しく食べれる感じ。
また、モリーユ、白アスパラ、山菜、柑橘、ニンニク、子羊など旬の食材が多く、春のブルゴーニュといった印象で大変良かった。ブルゴーニュワインオンリーのワインペアリングも含めて、ブルゴーニュという土地(テロワール)を丸ごといただいたような感覚で、大変に満足。
なんというか、コテコテの油絵の絵画というよりも、水彩画で構成された良い意味で淡く美しいコース / ワインペアリングだった。以前訪れたパリの3つ星Le Pre Catelanとは対照的な印象。これがブルゴーニュの3つ星かと納得の一夜でした。円が高くなった頃にご訪問ください(果たしていつの日か)。

Katsuma Narisawa
Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.
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