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NIKI Hills Winery / 北海道

北の大地が生み出すワインと美食、人の暖かさ

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NIKI Hills Winery / 北海道

「誕生日旅行どこにいきたい?」。彼女氏からの魅力的なオファーを受け、連日の与野党協議の末に今年は北海道に行くことに。

先日の新潟のカーブドッチでの宿泊体験が非常に美しい時間だったので、今回もワイナリーに泊まりたく情報収集すると、大橋MWやワイン好き大企業社長さんに「ニキヒルズは綺麗ですよ〜」とオススメいただき、余市エリアのNIKI Hills Wineryに泊まることにした。

余市といえば、入手困難なほどの人気を誇るドメーヌタカヒコを筆頭に、いま国内で一番勢いのあるワイン生産地。最近はYOSHIKIも余市でワイン作りに挑戦し始めたとか。余市の勢いの一端にでも触れられればという気持ちとともに、いざ北の大地へ。

※NIKI Hills Winery以外の北海道旅の様子はこちら


札幌から余市までは車で1時間、余市の中心街からNIKI Hills Wineryまでは10分ほど。木々と畑とたまの民家しかない田舎道を走っていると「あ、見えてきた!」と彼女氏。遠くの山の斜面に、綺麗に整理された葡萄畑が見える。

全景を撮り忘れたので、この写真のみ公式PVより引用全景を撮り忘れたので、この写真のみ公式PVより引用

NIKI Hills Wineryは、余市町のお隣の仁木町にある滞在型の複合ワイナリー。2014年に耕作放棄地の整備から事業を開始、2019年からは自社畑のブドウによるワイン造りを本格始動した、ワインツーリズムを通しての地域創生を掲げる比較的新しいワイナリーだ。

ホテルの周囲はジブリ的というか童話の世界というか、暮らしと自然の近さを感じさせる世界観。

ホテルの中に入ると、モダンで広々とした見晴らしの良いラウンジが出迎えてくれる。ウェルカムドリンクとしていただいたのはHATSUYUKI Sparkling。ケルナーで作られたスパークリングで、キリッとした酸と透明感に、さっそく北海道らしさを感じる。良いね。

宿泊する部屋は誕生日だからと彼女氏が張り切ってくれて一番良い部屋へ。天井が高く広々としていて、革のソファーや古風な化粧台、絵画などが飾ってある。地方のお金持ちのお家にお邪魔させてもらったような印象の部屋。大きな窓から葡萄畑と緑豊かな山々が見えて心地よい。

さて、部屋で少し休憩してからの、早速ワイナリーツアーへ。まずはカートにのって園内を探索。
このカートがなかなかに揺れるわ、案内人の副支配人が斜面をモリモリと走っていくわで、ちょっとしたアトラクションの様相。裏手の森に入ったり、小高い丘からワイン畑を眺めたり、また途中で突発的にさくらんぼ狩りもさせてもらい、彼女氏もご満悦。

5月にカーブドッチに訪問した際は、葡萄の生育状況はまだまだ赤ちゃんといったくらいの小ささだったが、7月の中旬になるとかなり葡萄らしい大きさになっていた。ブドウの生育スピードを直に見れて楽しい。

園内探索の後に醸造所へ。副支配人の解説を聞きつつ、並行して彼女氏にここぞとばかりにワインスクールで習った内容をクイズで出していく。「この樽っていくらだと思う?」「えーっと、20万円!」日頃の教育(ウザ目の解説)の賜物か、だいぶ知識がついてきて偉い。

さて、ツアーから戻ってきて少し部屋の中でのんびりしていると、あっという間に夕食の時間。まずはラウンジに集合してからの、バーエリアに移動。夕食は自分たち以外にもう1組のみの模様。

まずはコンセプトについて口頭説明。レストランの店名「アペルシュ」はフランス語で洞察、慧眼、発想を意味し、「普段感じることのできないものを感じてもらえるレストランにしたい」という思いだそう。そんな前振りの後に、まず初手は謎の植木鉢とスコップを渡される。言われるがままに土を掘ってみると、中からラディッシュが出てくる演出。そして普通に土だと思っていた茶色い粉はカカオ。初手からだいぶ面白くて雰囲気が和む。

お次はレストランに移動して、いよいよ本格的にディナーを開始。レストランはワインの樽を熟成させている地下セラーに併設された空間にあり、大変良い雰囲気。

一杯目はPROPOSE ROSE Sparkling NV。プロポーズという名前に可愛らしいピンク色のスパークリングで、カップルで飲むにはだいぶピッタリな一杯。
アミューズは「おもてなし」というタイトルで、フォアグラと小豆の最中。濃厚なフォアグラの脂と塩気が、小豆の甘さと濃さで更に濃厚になっているところを、ロゼの優しい酸味と瓶内二次発酵の細やかな泡で洗い流すペアリング。一品目から満足でこの後の期待が上がる。

二品目は「新緑」。小樽の雲丹とレモングラス。ウニはこの時期がシーズンであり、濃厚で美味しいのだが、良い意味で濃厚さよりも爽やかさを感じる方向性。北海道の食文化の方向性は、素材の味を活かしつつ、すっきり爽やかな印象だな。

三品目は「母の日」。サクラマスとアスパラガスがのっている美しいブーケのような一品。見た目が非常に美しいのに加えて、パリッと香ばしい生地にサクラマスの旨み、アスパラガスのフレッシュさが非常に美味しい。
ワインはNEIROという白ワイン。バッカスとケルナーのアッサンブラージュ。バッカスと聞くとローマ神話の酒の神の名前しか思い浮かばない程度に馴染みがないが、バッカスはドイツ系の白ワイン品種の名前。飲み口は白い花系の華やかさがありつつ、後味がほんのりビターでサクラマスとアスパラガスの苦味とマッチ。

北海道でのワイン作りには冷涼な気候に耐えられるブドウ品種が必要であり、気候がある程度似ているという理由から、ドイツ原産の品種であるケルナーやバッカス、ツヴァイゲルトといった品種が使われていた。しかし近年ではドメーヌ・タカヒコの成功や、温暖化によるワインベルトの上昇によって、ピノノワールやシャルドネといったブルゴーニュ系の品種が徐々に増えてきている。

この日の札幌の最高気温は35度。ワインベルトの上昇を肌で感じる暑さである。いや暑すぎない?

四品目は「潮騒のいたずら」。ホタテとトマト。ワインはシャルドネの2023。グラスが2つ用意され、同じボトルから2つのグラスに注がれる。何事かと思っていると「グラスの違いを飲み分けてください」とのソムリエからの説明。ああ、なるほど。飲み口が広い方が香りが華やかで味が円やか、そしてグラスが高い方が勢いよく喉に入ってくるのでストレートな印象の味になる。

直近同じことをワインスクールでやったのだが、グラスの違いで驚くほど味の印象が変わるので、試したことがない方は一度やってみるのがおすすめ。

五品目は「薫風」。ENIWA ROSSOという豚肉に行者ニンニク。ワインは引き続きシャルドネ。行者ニンニクの香りと樽シャルドネのこってりバター感がマッチしていて良い。
「次のワインが来るかと思って頑張って全部飲み切ったのに、また追加で注がれたんだけど!」と彼女氏が謎にプリプリしている。

六品目は「繋ぐ」。こちらのスペシャリテだそうな。たくさんの種類の野菜を使った美しい一皿。合わせるワインは出汁感のあるピノノワール。野菜は美しいし、ピノも一定華やかではあるものの、使っている食材やピノの出汁感から和のテイストも感じられて面白い。多種多様な野菜が、それぞれの個性を出しつつも、全体の調和を保っている。

余談になってしまうが、メニュー説明の紙のデザイン、コンセプト、そしてスペシャリテの方向性から、個人的には大阪のHAJIMEを思い出してしまった。しっかり独自性があるので、HAJIMEのパクリだとかネガティブな感情は一切感じなかったのだが、シェフも大阪出身だと言うので正直インスパイアされてるのかなあと邪推。逆に一切感化されずこの方向性だったらそれも面白い。シェフに答え合わせしてみたかったものの、変に聞くと大変失礼なので聞けず。

七品目「変化」。平目にスープを後からかけていただく。これもHAJIMEっぽいなと思ってしまったものの、それはともかく美味しい。

ワインはHATSUYUKIというこちらのフラッグシップワイン。ジューシーな酸味果実感はありつつ北海道らしさを感じる爽やかさがあって良い。

八品目「森のささやき」。蝦夷鹿肉。ワインはツヴァイゲルトの2023。

ツヴァイゲルトはスパイス感、複雑さはありつつも、重すぎず透明感を感じる仕上がり。日本ワインのペアリングフルコースは、最後まで軽やかだな。

最後は「贈り物」ということで、夏苺のクレープ。こちらも大変美味しい。ワインはHATSUYUKIの遅摘みで作ったデザートワイン。

誕生日祝いのプレートも大変華やかな感じでいただいて、いい感じに終了。

いやあ、空間もよく、スタッフさんの人柄もよく、北海道の風土を感じる料理とワインで良い時間だった。

何度か記事で書いている通り、日本ワインは好みでいえば好きではないのだが、最近はこれはこれで良いかもと感じることも多々。特に北海道に関しては、全体の食文化が(というか主に魚介や寿司が)素材の味をストレートに味わう方向性が強いように感じており、ワインについても同じような印象。飾り気のあまりない、実直で爽やかな味。

欧米のワインに感じる派手さ華美さがないのが今ひとつに感じていたが、水墨画を眺めるようなタイプの面白さということでアリなのかもしれない。たくさん飲んでも酔いづらい気がするし。​


夜はホテルの周辺を散歩。満点の星空が綺麗だったので、久々に星景写真も撮ってみる。三脚もないのでブレブレ写真しか撮れないのだが。ライカで撮る星空は綺麗。

「あれがデネブ、アルタイル、ベガ…?」「いや、あっちかも?」「星多すぎない?」と雑な星空トークを彼女氏と繰り広げる。昔は星座や神話の話から宇宙科学の話まで幅広くトークできたのだが、長らく披露する場もなく、記憶は幾億光年の彼方へ消え去ってしまった模様。


翌朝。のんびりと朝食を食べる。朝食も全て美味。米も魚も野菜も美味しい北海道。最強か?

食品サンプルかと思うほどに色が濃い鮭食品サンプルかと思うほどに色が濃い鮭

朝食後、自室でまったりとコーヒーをいただいて、その後に軽く散歩していると、あっという間にチェックアウトの時間に。シェフも含めてスタッフの方々6人ほどが総出でお見送りに来てくれる。

やや恐縮だなあと思いつつ、車に乗り込みホテルを出た後、ふと丘の下の方に差し掛かってからホテルの方に振り返ると、なんとスタッフの皆様が大きな旗を振って見送ってくれている。心温まるお見送りに感動。​

ホテルもレストランも大変良いところで、また来たいなと思う場所だった。こちらのツアーにはいくつか種類があり、その中には世界的冒険家の舟津圭三氏(総支配人)といくトレッキングツアーもある模様。舟津氏の南極大陸横断の著書を今読んでるのだが、冒険心をくすぐられて非常に面白い。冬の北海道にくるのもまた乙かもしれない。​

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Katsuma Narisawa

Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.

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