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和田倉 × 然土 / 丸の内

いい日本酒を飲む喜びを日本へ、世界へ、多くの人へ

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和田倉 × 然土 / 丸の内

毎度大変にお世話になっている大橋MWより、松竹梅白壁蔵「然土」をフィーチャーしたディナー会にご招待いただきました。会場となるレストランは、パレスホテル東京の和田倉。

この日は当日の朝にオーストラリアから帰国したのですが、帰国して早々に皇居目の前の素晴らしいロケーションで美味しい和食と日本酒をいただけて嬉しい限り。

今回フィーチャーされる「然土」は、宝酒造の『松竹梅白壁蔵』ブランドのフラッグシップ商品。大変に恐縮で失礼ながら、ご招待いただいた時点での自分の知識では​「松竹梅って…ええと、カップ酒とか出してる老舗のメーカー?」​というレベルであり、モダンで美味しい高級酒である然土と松竹梅が全然紐付いていなかった(申し訳ございません)。なので、然土が松竹梅のお酒であることを知って驚く。​

恒例の大橋MWによる解説によると「ドンペリやオーパスワンなど、ワインの世界における超有名酒は、大手メーカーが作っている。しかし、日本酒でそういった大手はいない」「​日本酒がもっと世界中の目を惹きつけるには、もっとスケールの大きなビジネスとしてやっていかなければならない​​そのために、宝酒造(松竹梅)さんのような大手メーカーの力が非常に大事​」とのお話(意訳)。いやあ、分かるなあ。

自分の好みとしては、少人数で凄いものを作って、その凄さが分かる最先端の顧客に提供する方向性は大好きだが、それでは世の中に大きなムーブメントは起こせず、世界は変わらない。​世界を変えるとは、多くの人を動かすということであり、そのためには多くの金が動くビジネスにしなければならない​(多くの場合において)。

突然の推しの子(12巻より)突然の推しの子(12巻より)

ちなみに、販売量が多くて美味しい日本酒といえば獺祭はどうなんだろう?と思い売上規模を調べたところ、株式会社獺祭の売上高は213億円、宝酒造は1196億円(AI情報で失礼します)。

それに対してドンペリを擁するLVMH Wines & Spiritsの事業売上は​53.58億ユーロ(9912億円相当)​と、まあ確かに桁が違う。LVMHグループとの比較だと、他のお酒も大量に含まれるので非常に雑な比較でしかないのですが、参考まで。​

次に、毎年安定した品質で大量の酒を提供することの大手企業の凄さについてのお話も。

毎年違う自然を相手に同じ品質の酒を作り続けるというのは、本当に凄いことである。そのため、フランスのワイン業界においては小規模生産者は大企業をリスペクトしているし、大企業は小規模の挑戦を面白がっているような関係性がある。しかし、日本酒にそういった関係性は薄く、業界が成熟していないとか。ちょうど直近、似たような話で獺祭の話やらナチュールワインの話でXが湧いていました。

また、某超有名大手ワイナリーの再現性への取り組み…属人性の排除、定量化に仕組み化や、それを松竹梅でも取り入れているという話で会が盛り上がる。この辺の話も含めて、今回の会のトークは酒造りに特化した話というよりは、もはや経営やビジネス全般に通ずるノウハウであり、属人性を高めて少人数少数精鋭で尖ったビジネスをやるか、属人性を排除してスケーラブルで安定的な大きなビジネスをやるかといった類の話であり、​直近は属人性マシマシの道を歩んでいる弊社としては大変に耳が痛い会話​。大企業の様々な仕組みやルールは往々にしてディスあれがちだったりするが、マネジメントや経営を少し学ぶとその偉大さに感じ入るのに似ているかもしれません。​

閑話休題。その場に集った皆様の自己紹介の後に、乾杯して料理がスタート。

乾杯のお酒は松竹梅の「澪」。スーパーや酒屋でもよく売っているスパークリング日本酒であり、大変恐縮ながら、澪は多少甘ったるくカジュアル層向けの酒なのでこういう高級和食の料理には合わなそう。…そんなことを事前に思っていたが、一口飲んでみると​普通にめちゃ美味しい​。生まれた頃から地元の一ノ蔵の「すず音」を飲んで育った身としては、澪のレベルが想定外に高く、謎に「ぐぬぬ」という気持ち。何。

個人的には昔より美味しくなっている気もした。普通に高級レストランの一杯目で通用するレベルであり、先入観に囚われるのはよくないなあと反省。

先付けは蛍烏賊と筍、タラの芽。奇を衒わない、実直で端正な和食という印象で、オーストラリア帰りの身としては和を感じられて大変良い。

食前酒としてもらったこちらのお酒は、澪とは対照的に神社の御神酒のようなクラシックな味わい。クラシックな和食に対しては澪が流石に甘すぎるので、蛍烏賊にはこちらで和のテイストで合わせるのがグッド。

お次は八寸。車海老や白魚、花山葵や穴子など。全体的に日本の春を感じる山菜や魚介の素材が多く、軽やかな苦味・香りが良き。

日本酒はここで松竹梅の白壁蔵生酛純米が登場。生酛純米の自分のイメージとしては、乳酸の酸と穀物感がもっとある印象だったが、こちらはもう少しベーシックで日本酒の方向性。生酛らしい酸や複雑味は少し残しつつ、一般消費者向けに飲みやすく整えた味かな。

生酛純米は和食全般で無難に合うが、ペアリングとして面白みがあるのは、澪と白魚かすみ揚げの組み合わせ。天ぷらとシャンパン的な(これもちょっと澪が甘すぎたが)。

お次はいよいよ然土が登場!山田錦100%を使い、生酛造り・無濾過原酒・袋吊りで仕上げられており、味わいはモダンで高品質な方向性。ほのかなメロン香、米の旨み、柔らかさと透明感がありつつ、全体のバランスがとれていて食事の邪魔をしない感じ。やっぱ美味しいね。

然土は2025年5月のIWC(International Wine Challenge)SAKE部門・純米部門でゴールドメダルとトロフィーを受賞している。IWC受賞の酒はやはりレベルが高い。

然土で特に注力されているのはメタンガス抑制の取り組み。​実は水田農法は非常にメタンガスを排出する農法であり​、地球温暖化の文脈で国際的に大きく問題視されているそうな。例えば、東南アジアのメタン排出の最大33%が稲作由来とされている。

グローバルに日本酒を売り出すためには、こういった取り組みが確実に必要とのことで、然土はメタンガス排出量の抑制に取り組んでいる。水田でメタンガスが排出されるのは、水中の微生物が要因なので、水を張らなければ排出されない。そのため、中干し(=田んぼの水を一回抜いて、意図的に乾かす作業)の期間を通常より長くとっている。

そもそも水稲ではなく陸稲(=水を張らずに育てる米)にすれば問題は解決するのだが、それだと雑草が問題となり農薬を多く使う必要がある。そうなると、メタンガスを多く出すのが良いか、農薬で環境負荷を高めるのが良いかという話であり、まあ一概には何とも言えない。​

料理はお椀で、蛤の土瓶蒸し。いやあ、和は良いな。然土のモダンさよりも、生酛純米の米の旨みが相性良い。

向附(=お刺身)。鯛の繊細さと然土の透明感が合う。美味。

ここで参加者の方の提案により、お燗で然土を試してみることに。大橋MWも宝酒造の方もお燗のスタイルを考えていなかったようだが、意外に良いとのことで盛り上がる。個人的にも、100%のポテンシャルを出すなら冷酒が良いが、お燗も全然美味しいなあという感想。

お燗の方が重心がより下がるので、重ための料理とのペアリングが捗って良い。マグロには燗冷ましくらいで合わせるのが個人的な好み。然土の冷酒で脂と酸を合わせてももちろん合うのだが。

焼物。和牛もも肉と黒むつ。和牛の芳香には吟醸酒の吟醸香(カプロン酸エチル、メロン系の香り)を合わせるべし、との大越ソムリエの教えを思い返して然土で合わせてGo。とても良きです。

黒むつも然土でいけなくないが、フォアグラ味噌のボディには熱燗で行きたい気分。

ここで特別に100周年記念の日本酒をご馳走させてもらう。透明感溢れる、良い意味で非常に「水のような」お酒であり、いくらでも飲めそう。参加者の方々も「これを売り出せば良いのに」と絶賛。

焚合(たきあわせ)は松坂牛のすき煮、食事に白米をいただく。

既にみなさん盛り上がっており、各所で様々な話題に花が咲いている。みなさん非常に偉い方ばかりであり経験豊富な方々が多く、然土のブランディング戦略の話で忌憚なき意見が沢山でて盛り上がったのには笑いました。

(盛り上がってたら写真撮り忘れた)​

最後に水菓子をいただいてフィニッシュ。

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帰国直後に大変に和を感じる食事と酒をいただき、そしてお偉い方々のありがたい話をたくさん聞けて楽しい会でした。昨年の渡辺酒造のNechiの会に引き続き、酒造りの話はもはやビジネス・企業経営のノウハウに通づるところが多く、非常に興味深い。

オーストラリア滞在中も、ペアリングを推している店では当たり前のように日本酒がでてきて誇らしい気持ちになったものだが、より世界に日本酒の魅力が広がっていって欲しいなと感じる一夜でした。ご招待ありがとうございました。

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Katsuma Narisawa

Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.

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