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Yiaga / メルボルン

オーストラリアの多様な文化と土地、食材を料理として再構築するレストラン

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Yiaga / メルボルン

メルボルンCBD(中心業務地区)の東側に佇むFitzroy Gardens内にあるレストラン、Yiagaに訪問。シェフの Hugh Allenとヘッドシェフ がNoma出身であり、Noma的な方法論を、オーストラリアの風土に置き換えて再構成した店との前評判です。​

Fitzroy Gardensは昔からの歴史ある公園の中であり、美しいヨーロッパ式庭園の緑の中を歩いて建物に辿り着く体験が心地よい。ほんの少しだけ俗世から切り離された別世界に迷い込んだ気持ちになる。個人的にはパリのLe Pre Catlanを思い出す体験で、日本でもこういう入る前から特別感のあるレストランができて欲しいなあ。

ワインペアリングはローカルワインメインのものと、世界各地の高級ワインメインのものと2種類ある模様。我々はもちろんローカルメインをチョイス。

まずはスパークリングで乾杯。Yiagaで特注しているオリジナルボトルで、爽やかな酸味と透明感のあるナチュラルなスタイル。

アミューズはシーパセリとオリーブオイルのアイス。一品目でアイスがでてくるのは初めてかも。夏の終わりのメルボルンにて、緑の爽やかさを感じる一品。

普段より、一杯目の乾杯のスパークリングとアミューズで大体のコースの全容がわかるという理論を提唱しているのだが、この時点で爽やかさと面白さがとても良く、この後の期待値が高まる。

2杯目は酸味が効いたビール。こちらも特注しているボトルだそうな。

ワインでのペアリングに拘らない柔軟さ、酸味をベースに爽やかにコースを開始する試合運びは日本のKabi野田を思い出す。シャンパンでフォーマルで華美な雰囲気を出していくような方向性ではなく、カジュアルで自然体だけどセンスがあるスタイル。

2品目は葉っぱのフリット。パリパリとした食感と衣の油でビールとの相性良し。

ブラックモア和牛に蒸しパン、グリーンアント。しっとりしたパンに和牛、そして酸味のある蟻という面白い一品。

お次は烏賊そうめん的な一皿。柑橘とバジルで爽やかに、そして隠し味に白味噌。箸でいただきます。

ココナッツのプリンにマカデミアオイル、そしてN25キャビア。こちらも面白い。日本人的には胡麻豆腐のような味わい。まったりと濃厚な口当たりでありつつどこかさっぱり。こういうところのキャビアって、メイン食材というよりも旨味と塩味を足す高級調味料の印象。

ワインは2013年のヴィクトリア州のリースリング。ミネラル感でキャビアに、熟成感でココナッツの重さに合わせつつ、キュッとした酸味で爽やか。

外の緑が美しく、グラスとワインに透過する光が美しく、森っぽい雰囲気の音楽(?)がゆったりと流れていて、空間も最高であり、幸せ。

トマトとデビッドソン・プラム(ローカル食材)、エルダーフラワー。トマトの瑞々しい甘さと水分、プラムの酸、エルダーフラワーの香りでこれまた爽やか。

ここで急にキッチンツアーが開始。バックヤードまで全てを丁寧に説明してくれる。こういう取り組みも楽しいね。

最後に、案内してくれた台湾人スタッフの女性に「你是很漂亮」としっかり伝えておきました。

お次はコーラルトラウト(オーストラリアのサンゴ礁に生息する高級ハタ)とマンゴー、ブラッドライム。個人的には魚料理といえばやはり日本であり、海外で魚を食べて感動することは少ないのだが、コーラルトラウトは旨みが強く、しっとりと上品であり大変美味しい。マンゴーや柑橘のニュアンスも、これもまた絶妙に組み合っていて美味しい。

魚とマンゴー柑橘はおそらく普段だったら敬遠する組み合わせなのだが、モダンオーストラリア料理は甘味と酸味と塩味と旨味、または各国の食文化ないし食材が、上品かつ万人に受けるバランスで調理されているようなイメージがある。こういう組み合わせにありがちな奇抜な印象がなく、自然体で美味しい。

メインのラストはカンガルー肉。牛肉のジューシーさと、ジビエの野生味が両立していて大変美味しい。付け合わせの舞茸も大変美味。日本食材やっぱり多いな。カンガルーはアデレードのワイン畑に野良猫のごとくたむろってました。

最後にデザートをいくつか。最初はなんとワカメを使ったデザート(!)。

メルボルン近くの湾でとれるワカメをブレゼ(少量の液体で弱火でじっくり蒸し煮)したもので、ストロベリーとワカメジャムのフローズンパルフェを巻いた感じのもの。流石に意外性に振り切りすぎでデザートとしての美味しさを損ねているのでは…?なんて先入観がありつつ食べてみると、イチゴとアイスの普通のデザートの美味しさに、ワカメの旨味やテクスチャの複雑性、エスニックさが適度に追加されて不思議な世界観。もはやよくわからない(褒めてる)。

お次はオーストラリア固有のバンクシアの種子鞘を精巧に再現したチョコレートデザート。そういえばさっきキッチンでパティシエが枝にさしてたな。mærgeでも似たような演出があったが流行ってるんだろうか?

美味しいが、やや満腹気味なところに濃厚かつ量が多くてやや食が進まず。

デザートに合わせて、最後のアルコールはPXの極甘口ワイン。粘性高めなテクスチャ、ドライフルーツやコーヒーっぽい甘さはチョコレート系のデザートに合う。

ラストはGumnut(ユーカリの実)を模したデザート。最後に森に戻ってきて終わりといったところ。

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大変素晴らしいレストランだった。自分はNomaに行ったことがないが、Noma的な北欧ガストロノミーの系譜……テロワールの再構築とクリーンでミネラルな方向性、サステナビリティや自然への敬意を感じつつ、単なるNomaの模倣ではなく、多様な文化と食材を内包したオーストラリア・メルボルンの地のレストランとして再構築されている。

特に、例えば日本の食材・食文化を使っていることからも感じられる多文化を許容する懐の広さ、甘味・酸味・塩味・旨味・苦味の五味を幅広く組み合わせつつ、万人が美味しく感じられるような仕上げ方が、オーストラリアという多文化の移民国家の現在地──多文化を前提に社会が設計されていることによる、万人にとっての居心地の良さ──をそのまま写しとっているような料理構成で素晴らしい。​

お値段はペアリング込みでひとり6.2万円ほど(1オーストラリアドル=110円程度)。なかなかお高いが、値段相応の体験かな。ローカルワインメインのペアリングは、普通に良かったものの若干記憶に残らなかったかもしれない。とはいえ、それが良い意味で前に出過ぎないオーストラリアワインの特徴でもあり、テロワールを感じられて良かった気はする。

大変オススメなので、メルボルンにお越しの際は皆様もお立ち寄りください。

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Katsuma Narisawa

Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.

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