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TURK FATIH TUTAK / Istanbul

アナトリアの風土・文化・歴史を凝縮したイスタンブールの二つ星

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TURK FATIH TUTAK / Istanbul

TURK FATIH TUTAK はトルコ初のミシュラン二つ星であり、現在もトルコに2軒しかない二つ星の一つ。2023年の世界ベスト50レストランでは66位。シェフのFatih Tutak氏は東京の三つ星「龍吟」やコペンハーゲンの Noma で働き、バンコクの The House on Sathorn でヘッドシェフを務めた後、2019年12月に帰国して TURK を開業しました。

イスタンブールはトランジットついでに1日ほど滞在する程度に考えていたのですが、航空券を取る直前に知り合った食通女史にこちらを激推しされ、​急遽3日ほど旅程を延長して予約することに​。こんなフットワークの軽さをいつまでも持っていたいものです。​

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レストランは新市街・旧市街の観光エリアから少し離れた位置にあり、事前のメールに返信しておくとホテルまで無料で送迎してくれます。イスタンブールのタクシーは運転が荒くて酔うなあ、、と思っていたところ、最新の電気自動車で丁寧に運転してくれて助かりました。

しかし本来15分の道のりが、慢性的な渋滞で40分。前日には大雨で道路が陥没したりと、都市インフラが色々と追いついていないようですね。​

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レストランは大きくモダンなビルの1階。入り口には行燈のような明かりが点々と灯っており雰囲気抜群。アジア的な要素と洗練された西洋の雰囲気が同居する、まさしく期待通りのイスタンブールの二つ星レストラン。

めちゃブレましためちゃブレました

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まずはラウンジにて着席。部屋の中央には火が煌々と灯り、東西のスパイスや食材、酒類が陳列された空間。

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封蝋付きの手紙をいただく。中はメッセージと、トルコ全土の食材マップ。これからこれらのローカル食材がでてくるんだなあとワクワク。

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最初に出てきたのは濃厚な白湯スープ。ジューシーな揚げ鶏皮、青ネギ、柚子。初手からめちゃくちゃに美味しい。。。。!!9月末のイスタンブールの夜は肌寒く、焚き火とスープで一気に温まる。

鶏の出汁スープはトルコでは風邪を引いたら出てくる定番で、本来はレモンを絞って飲むもの。柚子に置き換えているあたりに、シェフの龍吟時代の名残を感じる。食前に胃を温めるのも東洋的。

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アペリティフは泡を頼むか迷いつつ、トルコ各地を表現したカクテルリストを渡されたのでそちらをオーダー。

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煙がモクモクと立ち込めた皿。煙が晴れると現れるのは、イスタンブールの屋台飯ことミディエ・ドルマ(ムール貝にご飯を詰めた料理)。街の適当な店で食べたものは正直あんまり美味しくなかったのだが、こちらはもちろん大変に美味。

黒い部分は本家は貝殻なところ、ここはムール貝のペーストをシート状にして包んでいるので食用可能。また屋台ではビールと一緒に食べるからという遊び心(?)から出汁はビールで煮詰めているそうで、屋台で食したことがあるとより楽しいでしょう。

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このように、ほとんどの料理に元ネタがあるので、トルコを一通り楽しんでから訪問するとより楽しいレストランであるように感じます。ハンターハンターのグリードアイランド編で、ゲームクリア後に挑むクイズ大会的な方向性(?)。​

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フォアグラキャンディ。Maison Lameloiseのものより少し大きくまろやか。ラズベリー系のコーティングで脂と旨味と酸味、綿菓子的なトッピングでパチパチとした食感の面白さ。

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口直しのピクルスジュース。イスタンブールの街角でよく売られている謎の赤い液体の正体がこれで、トルコ版の青汁的な健康飲料。街角で試す勇気はなかったのだが、ここで美味しく飲めて満足。

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さて、アミューズを終えてダイニングへ。ワインペアリングもここからスタート。

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カッパドキアのスパークリング、Kavaklıdere Côtes d'Avanos Méthode Traditionnelle 2022。シャルドネ+土着のエミルで瓶内二次発酵。硬質でチョーキーな印象でレベル高い!ここまでの旅程でトルコワインにあまり良い印象がなかったので、良い意味で裏切られます。

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卵料理。メネメン(トルコ風のトマト卵炒め)の再解釈。濃厚な黄身に、これまた濃厚で甘味のあるコーンプディング、ブルーテールロブスターで最高。容器も卵でかわいい。

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パン。フレンチの付け合わせではなく、パンがメイン。トルコは一人あたりのパン消費量が世界一とされる国であり、「トルコ人はパンが大好き」という意思表示を感じます。さすが肥沃な三日月地帯の一角。

パンに合わせるのはスジュク(サラミ的なもの)、バター、ハチミツ、オリーブオイル。この1皿で黒海(パン、バター)→エーゲ海(水牛、オリーブ)→東アナトリア(ハチミツ)→中央アナトリア(スジュク)→南部(ザクロ)と国土を一周する系。スジュクはサラミの旨味と肉々しさを100倍にしたような味で、バターとハチミツと合わせると意識が飛ぶ美味しさ。先の卵料理とこのパン+スジュクは、トルコの朝食の定番セットでもある模様。

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魚料理の小皿が5つ。ツナ、牡蠣、鯛、鯖、海老。海老は塩辛をほんのり想起する濃い味、牡蠣は良い意味で主張がなくサルサ的なソースとのバランスが良い。鯛は寿司仕立てで、良い意味でネチャッとした食感がカリフォルニアロール的。ツナは少しスパイシー。

どの魚がどの地域か、丁寧にディスプレイで教えてくれて楽しい。

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合わせる白はNeferiye Emir 2025、同じくカッパドキアの固有品種エミル。カッパドキアは標高が高く、泡や白の産地となっている模様。火山性土壌でミネラリー、青リンゴや柑橘で、少し控えめなシャブリみたいな感じ。Neferiye はエミルを使う小規模なナチュラル系の造り手。

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続く白はイズミルのUSCA Sonnet 5 Bornova Misketi 2025。​Sonnet 5というと私の職業上はClaudeしか連想できませんが​、こちらはシェイクスピアのソネット5番の意味だそうな。白い花と桃、ライチの香りで、辛口のゲヴュルツトラミネール的な印象。ボルノヴァ・ミスケティはエーゲ土着のマスカット系品種。

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「セルジュークスター」という新作。セルジューク朝美術で最もよく知られた幾何学模様で、​「繰り返される図形から組み上げられたこの星は、多くの要素が寄り集まって一つの完全なものを作り上げる様子を示しています」​とのシェフからのメッセージ。

ちなセルジューク朝といえば、1071年にビザンツ帝国を破ってアナトリアに進出し、「トルコ人がトルコに住み始めた」出発点となった国です(=ギリシャ語を話すキリスト教徒の"ローマ人"から、トルコ語を話すムスリムの"トルコ人"になった)。これ豆な。

お味はキャビアと葡萄の葉、燻製ヨーグルト系のソース、茄子。キャビアは控えめで、ヨーグルトの濃厚さと酸味が主役。ライチの香りの白ワインと合うなあ。

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ワインは2種類が同時に登場し、「どっちが合うか飲み比べてみて!」とのこと。赤はKuzubağ Çal Karası 2025、エーゲ海地方デニズリ県の固有品種チャルカラスで軽やか系。白はArcadia Odrysia Gris 2024、こちらは固有品種ではなくソーヴィニヨン・グリ主体。ブルガリア国境近くのトラキア地方で、標高要因の冷涼系。控えめなアルザスのピノ・グリという印象で、こちらもレベル高かった。

ちなみにイズミルのUSCA、デニズリのKuzubağ、そしてこの後の赤はいずれもエーゲ海地方のワインで、このエリアは古代ギリシャの時代には「ギリシャ」の一部だった地域。ギリシャからトルコへ旅してきた身としては、古代ギリシャのワイン文化が今もここに残っている気がして、少し感慨深い。いまだにエーゲ海地方が国内ワイン生産量の半分以上を占めるそうです。

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メインの魚料理、sea bass(スズキ)。しっとりシルキーな質感で大変美味しい。魚は日本が一番と自負している(??)ものの、海外でここまで美味しい魚を食べると毎度驚いてしまう。ソースの光沢も美しいね。

上に乗っているのは「beef tendon」と説明され、「ビーフ天丼??って何??」と騒いでしまいましたが、beef tendon = 牛すじ。英語ができない日本人の醜態を晒してきました。「エーゲ海のスズキ×アジアの牛すじ」的な一皿。

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口直しにソルベ。リフレッシュ。

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メインの肉料理は、クヴルジュク種の仔羊ロース。盛り付けが美しく、味もひたすらに美味。

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合わせる赤は7 Bilgeler Bias Priene Cabernet Franc 2022、こちらも国際品種。普通にレベルが高くて少しおかわりしました。

ソムリエに「トルコワインの特徴って何だと思う?」と聞くと、「品種の多様性」「ワイン制度が未成熟であることによる自由」「実は歴史が長い」という回答。

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トルコ式餃子ことマントゥ、「From My Mom」というタイトルのこの店のシグネチャー。シェフがバンコク時代にトルコ人の顧客向けに作ったのが始まりで、母国の料理と向き合うきっかけになったのだとか。今日はほうれん草入りの緑色の皮。

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ダイニング最後はピスタチオのデザート。ヨーグルトアイスっぽいのとキャラメリゼしたパイみたいなのが美味。

合わせるのはCorvus Passito 2015。干し杏、ハチミツ、オレンジピール。単体ではそこまでの驚きはないものの、ペアリングとしては完璧だったなあ。

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ここからはキッチンツアー。キッチンの様子を見ながら色々食べさせてくれます。舞台裏を見るのは楽しい。

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その後はもう一度ラウンジに戻り、果物を食べて終了。

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18:40スタートで23:30終了。HAJIMEに並ぶ長さでしたが、間延びした印象はなく、楽しく5時間を過ごしました。帰りも送迎あり。​

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良いレストランでした。味はもちろん、アナトリアの風土、文化、歴史を凝縮したコース構成で、トルコ旅のハイライトといった趣。店名に「Turk(=トルコ人)」を冠する通り、トルコ人によるトルコ料理へのリスペクトと再構築が強く感じられてとても良かった。今回はイスタンブールしか行けなかったのですが、各地を巡り、文化や歴史を知っているほど楽しめるのだろうなあ、そう思える体験。

今年は海外ファインダイニングをたくさん訪問できていて楽しいわけですが、その土地の風土や文化を反映したレストランは、旅のハイライトになる感じがしてとても良い。​

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価格はコース19,900トルコリラにワインペアリング8,900トルコリラ、最初のカクテルも合わせて合計30,300トルコリラでおよそ9.7万円。ミシュランの評価はまだ二つ星ですが、三つ星の定義である「そのために旅行する価値のある卓越した料理」を感じるレストランでした。とはいえ、この店のためだけにトルコに行くというよりは、トルコを楽しんだ後の答え合わせ的な総合体験が楽しいレストランでしょう。まさしくグリードアイランドの最後のクイズ大会(?)。ぜひ皆様もご訪問ください。

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Katsuma Narisawa

Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.

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