フランス・ブルゴーニュでワイナリー巡り
2026年5月 ドイツ〜アルザス〜ブルゴーニュ旅行記 #6

いよいよワインの聖地、ブルゴーニュに突入です。なお、聖地に乗り込むにあたり、巡礼の準備はほぼしていません。
ブルゴーニュ1日目
Les Sources de Vougeot(ホテル)
アルザスから3時間ほどかけて、ホテル最寄りのGilly-lès-Cîteaux駅へ。14時すぎにホテルに到着。
到着早々、荘厳な建物が目に入ってテンションが上がる。

今回のホテルはLes Sources de Vougeot。WSET Level 3の試験勉強中、現実逃避のためにブルゴーニュにリアルな親しみをもつために気まぐれにホテルを調べていたところ、圧倒的なお洒落さに当てられて、いつか泊まりたいと思っていた高級ホテル。
建物自体は14世紀にシトー会修道院長たちの居館として建てられた歴史的建造物で、Caudalieで知られるLes Sourcesグループが取得し、大規模改装を経て2026年2月にリオープンしたばかり。つまり「修道院長の邸宅に泊まる」という、功徳なのか罰当たりなのかよく分からない体験ができる。場所はヴージョ村近郊、Clos de VougeotやRomanée-Contiの畑にもほど近い、巡礼者にとってはド中心の立地。
内装もどこも良い雰囲気。



特にスパがイケイケ(この写真は公式より)

部屋はまあ普通にいい感じ。

もともと今回の旅はドイツ・アルザスがメインで、ブルゴーニュは「時間があったら立ち寄る」程度の扱いだった。予定は旅行中に立てればいいやと思っていたら、結局考える余裕がないままノープランで聖地に到着してしまう。
事前に計画した方が100万倍良いのは理解しているのだが、如何せん目の前の仕事やら趣味やらに追われてしまうのが自分の悪癖。
せっかく高級ホテルに泊まるので、ホテルのレセプションにダメ元で相談してみる。
「ブルゴーニュの予定が全然立ってないんだけど、なんかオススメのワイナリーとかありますか?今日明日行きたいんですけど」
「!??基本、事前予約必須だから、急にワイナリー見学は厳しいですよ…!?」
何しにブルゴーニュ来たんじゃいこいつ、という顔で心底驚かれる。いや私もそう思います。
「…ど、どんなワイナリーに行きたいとかはありますか?」
うーん、有名ワイナリーは無理だろうし、そもそもブルゴーニュにはそもそも縁も知識もなく、これから興味を持つきっかけになれば程度の気持ちで来たんだよな。
「えっと、特にないですね」
「…!??な、なるほど!」
我ながら高難易度のワイン試験を受けた直後とは思えない回答。申し訳なかったなあ。
「……分かりました!!(若干ヤケ気味)明日ならなんとかなるかもしれないから、すぐトライしてみます…!また後で部屋に電話しますね!」
そしてディナーの際にレセプションへ立ち寄ると、翌日のワイナリーが3件、きっちり予約されていた。プロの仕事です。大変感謝。
ワイナリー訪問の予約文化は地域によってだいぶ違うようで、オーストラリアは基本ふらっと行けばテイスティングさせてくれたし、ドイツとアルザスは半々、ブルゴーニュは原則事前予約必須。世界中から巡礼者が押し寄せる割に小規模なドメーヌが多いので、飛び込み客に構っている暇がないのだろう。
シャトー・デュ・クロ・ド・ヴージョ(修道院)
あいにく小雨が降ったり止んだりの天気の中、ホテルから近いシャトー・デュ・クロ・ド・ヴージョへ。
線路を挟んでホテル側のエリアは平地であり、葡萄畑よりも他の作物を育てていたり、牛や羊がいるようなエリアなのだが、線路の向こう側は丘陵が広がり、そしてその全てが葡萄畑。葡萄畑と歩道の間は低い石垣で区切られている。
そんなお伽話のような美しい風景を突き進むと、突如現れたのは、葡萄畑の中にある、小さなお城。
多分、この時の光景をずっと覚えているんだろう。そう思えるほど、美しい景色であり、美しい光景だった。
…が、天気が悪かったので、ちゃんと写真が撮れず。2日目の写真をご覧ください。


お城に見えた荘厳な建物は、正確には修道院。クロ・ド・ヴージョは、シトー会の修道士たちが1110年頃に拓いた醸造所だ。中世においてワイン造りとは、知識とノウハウを独占した修道士・修道女たちの一大事業であり、彼らは土を舐めて畑の良し悪しを見極めたという伝説まで残っている。「テロワール」という概念の実質的な発明者である。
ちなみにこの畑、フランス革命で教会から没収・競売にかけられ、さらにナポレオン民法典の均分相続で細分化が進んだ結果、現在は約50haに対して所有者が80以上。ブルゴーニュのラベルが複雑怪奇な理由の半分は政治の産物だ。
館内は博物館になっており、巨大な中世の圧搾機や、利き酒騎士団(Confrérie des Chevaliers du Tastevin)の歴史などが展示されている。騎士団。かっこよすぎる。いつか入ってみたい。


Fromagerie Delin(チーズショップ)
正直やることがなく暇だったので、ホテル近くのチーズショップへ。1階がショップで、地下部分がちょっとしたチーズ体験施設・テイスティング会場となっている。
€20ほどでチーズ5種+ワイン5杯+丁寧な解説。ブルゴーニュの物価に怯え始めていた身としては、だいぶ良心的である。チーズもワインも良く、オススメ。チーズももっと詳しくなりたいなあ。

Le Clos De La Tour (レストラン)
ブルゴーニュ初日のディナーはホテルのレストランにて。詳細は以下。
https://katsumanarisawa.me/essays/202605-le-clos-de-la-tour
ブルゴーニュ2日目
2日目より、ようやく本格的にワイナリー巡り。すべてホテルのスタッフが予約してくれたワイナリー。
結果的に、家族経営で素朴なRION、大資本に買収されリブランディング中のMoillard、スピリチュアル全開でイケイケのBoissetという個性の割れた3軒となった。レセプションの采配が良い。
グランクリュ街道をサイクリング
ホテルでe-bikeを借りてサイクリング。今日は朝からしっかり晴れて、朝露で輝く路面や畑がとても美しい。
ひたすらこういう風景をみながらサイクリングまずは定番観光スポットであるDRCの畑へ。DRCが何かはこちらの記事をどうぞ。1本100万円超のワインを生む畑の世界一有名な十字架の前では、観光客が入れ替わり立ち替わり記念撮影をしている。



DRCの畑の後は、気まぐれに丘の上の方までサイクリング。
美しい緑の丘に街並み。定時になると教会の鐘が鳴り響き、緑の美しい葡萄畑の中に修道院が佇んでいる。
「神に愛された土地」と称されるワインの聖地、ブルゴーニュ。
この景色を見ていたら、まあそれもそうだろうな。そう納得してしまう。



個人的にブルゴーニュといえば、漫画「もやしもん」のフランス編がとても印象に残っている。何度も読み返している漫画でありエピソードであり、聖地訪問の気持ちになった。
そういえば自転車で街道を巡るエピソードがあったなあ、なんて思って漫画を読み返してみたら、最初に出てくる修道院はまさしくクロドヴージョの話だったらしい。

「もやしもん」第6巻より。漫画を読み返してみると、当時は「ワインの世界、よくわからんわ〜〜」と思いながら見ていた説明が、今では当然のこととして理解できてしまい、また細かい描写のそれぞれで「あ〜、ボーヌから入ったのね」「騎士団のことを”おじさん達の集会所”とかdisってる」「長谷川が飲んでたのはロマネコンティか」などと気づきがあって面白かった。大人になりました。
その後、クソデカドローンが農薬を散布しているのを眺めたり、なぜか畑仕事中の人と仲良くなったり、丘の上は少し涼しく「これがミクロクリマか」と教科書の単語を体感したり、下りの砂利道で割と死にかけたり。
3日目には街道を北へ、ジュヴレ・シャンベルタンの方までサイクリングしたのだが、これもとても気持ちよく、美しく、幸福な時間だった。ワインラバーにも、そうでない人にもオススメ。
Domaine Armelle et Bernard RION / Vosne-Romanée(ワイナリー)

ヴォーヌ・ロマネの家族経営ドメーヌ。トリュフ探索犬を飼っており、なぜかトリュフ推しでもある。今回の3軒では一番素朴で親しみやすい雰囲気。
醸造所の説明はさらっと流し、地下のカーヴで丁寧な解説とともに6種類ほどテイスティング。
正直に書くと、ラストに出てきたクロ・ド・ヴージョのグランクリュは美味しかったが、それ以外はあまりピンとこなかった。完全にこちらの解像度の問題。ブルゴーニュは村と畑の固有名詞を覚えてからが本番のゲームであり、自分には早かった模様。確か€30ほど。出直します。




Maison Moillard / Nuits-Saint-Georges(ワイナリー)
19世紀から続く、ニュイ・サン・ジョルジュを代表する歴史的な大規模ネゴシアン(=葡萄を買い付けて醸造・販売する業態)。2016年に大資本Grands Chais de Franceに買収され、現在絶賛リブランディング中である。
テイスティングルームも醸造施設も広く、解説も丁寧。ただワインの方は、ここでも正直あまり記憶に残らず。後半のプルミエ・クリュは美味しかった。うーむ。もっと解像度を上げたい。



Maison Jean-Claude Boisset / Nuits-Saint-Georges(ワイナリー)
ニュイ・サン・ジョルジュの街より少しだけ奥まったエリア、丘の葡萄畑の手前にあるワイナリー。建物が非常に美しく現代的で、入り口の屋根を葡萄の蔓が覆っている。全体的にインスタ映えする空間であり、味だけでなく外見やブランディングも気にするイケイケな経営者が経営していそうな空気。


解説では「黄金比」「土地のエネルギーの循環」「月の満ち欠け」「星座」といったワードが次々と登場。いわゆるビオディナミ(月や天体の運行に合わせて栽培・醸造を行う農法)であり、スピリチュアルでオカルトな雰囲気をビンビンに感じる。理系の大学院を卒業した身としては必要性について小一時間問い詰めたくなるのだがスピってるワイナリーはなぜか美味い。月の満ち欠けまで気にする人間は、畑の手入れも丁寧ということなのかも。
解説の気合も3軒で随一であり、テイスティングルームもオシャレで、一番楽しく見学できた。イチオシのワイナリーです。





Maison Lameloise / シャニー村(レストラン)
夜にはブルゴーニュの三つ星レストラン、Maison Lameloiseにも訪問。詳しくは以下で。
ノリで予約したのはいいものの、シャニー村はホテルから割と遠く、帰りに高額のタクシー代を請求される事態に。ここが目当てなら、ボーヌに泊まるのが正解かも。
https://katsumanarisawa.me/essays/202605-maison-lameloise
レストランに向かうまでの夕焼けの村が美しかった。




おわりに
ノープランで乗り込んだ聖地ブルゴーニュ。知識がないせいで楽しめなかった側面はありつつ、この機会でブルゴーニュワインにより興味が出たのと、ブルゴーニュの美しい風景、空気、雰囲気を全身で感じられて、テロワールへの理解が高まったようには思う。
また知識をつけてから9月にリベンジする予定。「コートドール」、すなわちまさしく黄金丘陵となる秋のブルゴーニュを楽しみにしてます。

Katsuma Narisawa
Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.
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