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東洋美人 x Dining33 / 麻布台

「稲をくぐり抜けた水」の言葉の通り、良い意味で水そのままの透明感がありつつ、しかしフルーティーで旨味甘味のある食事に合うスタイル

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東洋美人 x Dining33 / 麻布台

麻布台ヒルズのインタートワインさんが主催するメーカーズディナーイベントにまたもや参加したので、恒例の記録です。今回のフィーチャーは「稲をくぐり抜けた水」を掲げ、フルーティーで透明感のある日本酒を作る「東洋美人」。

会場は前回のRudolf Furstの回に続き麻布台ヒルズ。今回は森JPタワー33階のDining33で、フレンチと日本酒のペアリングをいただきます。Dining33は東京タワーを目の前にしたオシャレな空間で、三國清三氏プロデュース本格フレンチをいただけるオススメスポット。

余談ですが、麻布台ヒルズの夏祭りやクリスマスマーケットでは、Dining33のハイクオリティな料理が良心価格で屋台で提供されているので、見つけたら必ず行きましょう。

恒例の大橋MWの開会の挨拶とともにスタート。大橋MWが地酒業界に目覚めたきっかけが東洋美人だそうで、蔵元の澄川さんは大橋MWより年下だが、兄貴分のような存在なのだか。会を通して非常に仲が良い様子が伝わってきました。

会場にいらっしゃった澄川さんからは「景色が見えるお酒でありたい、また、稲をくぐり抜けた水でありたい」「これは本当に大橋さんと付き合いさせていただいたからこそ生まれた言葉」とのコメント。「稲をくぐり抜けた水」とは面白い表現だな。

まず1杯目は「限定純米吟醸 亀ノ尾 生 醇道一途」。

柑橘系のフルーティーな香りに、米の旨みと甘さ、透明感を感じるスタイル。普通はフルーティーだったり甘かったりすると、やや重く感じたり、単体では美味しくとも食事には合わなかったりするのだが、東洋美人はいくら飲んでも飲み疲れない軽やかさ、そして食事とも合うスタイル。

2杯目は先ほどの「醇道一途」の米違いで山田錦。2つの酒で香りや味は大まかに一緒でありつつテクスチャーが異なっており、山田錦の方がシャープで王道・上品なスタイル。「山田錦はやはり偉大なお米」との大橋MWのコメント。

先ほどの日本酒の亀の尾という品種は、山田錦よりずっと古い米であり、個性的で繊細な酸の印象。亀の尾は漫画『夏子の酒』のモデル米として有名だそうです。

料理はホワイトアスパラガスと生ハムのプレッセ、カラスミ、グリビッシュソース。3週間前のドイツ〜フランス旅行中、アスパラガスを毎日のように食べていたので個人的に少し懐かしい。

これに少し残糖のある東洋美人を合わせると、アルザスのリースリングとのペアリングのようで面白い。東洋美人の「食事にあう華やかな酒」の方向性は、個人的にまさしくアルザスの白ワインに似てる気がするな。そんな感想をお伝えしたら、東洋美人の澄川さんもまさしくアルザスのワインが好きだそう。その好みが酒造りにどこまで反映されてるかは聞けずだったが、ちょっと嬉しい一致。

プレッセ(食材を重ねて型に詰めた料理)でのアスパラガスの仕上げはドイツ・フランスでは食べておらず、フランスより上品・繊細であり、どこか和のエッセンスを感じるフレンチだなという印象。しかし生ハムとカラスミの旨味も適度に効いていて美味。​

IWC Sakeが先週まで開かれていたのもあり、IWCの話も話題にあがる(※IWC Sakeは世界的なワインコンペティションの日本酒部門)。日本酒の世界では高級酒ほど甘い仕上げをする傾向があり、特に今年のIWCの出展酒は甘い酒が多かったそう。しかし、下手に甘くするともたれがちであり、そのバランス感は非常に難しい。そのバランスを突き詰めているのが東洋美人。

​「日本酒の中で一番甘くて、一番軽いお酒」​とは澄川さんのご本人談。この矛盾を成立させているのが凄い。

3杯目は「純米大吟醸 壱番纏」。日露首脳会談にてプーチン大統領も気に入ったなど、国の顔としての採用も多い、東洋美人のフラッグシップ的存在。​ご時世的にこの宣伝文句が使いづらい​とのこと。悲しいなあ。

「壱番纏」とは「一番の晴れ着」の意味で、まさしくフラッグシップという印象の米の旨みと透明感のある酸。レベルが高い。

料理は「蕎麦の旨味」とのことで、蕎麦の実が入ったコンソメシャンピニオン(=キノコのコンソメスープ)。ペアリングで壱番纏を合わせると、日本酒の穀物感が際立ってまた違った印象。

4杯目は「特吟愛山 純米大吟醸」。愛山という米の品種は「酒米のダイヤモンド」とも呼ばれるほど生産量が少なく、希少で有名な品種。甘くてジューシーなのが特徴だが、大橋MW曰く「抜け」が悪く、良いバランスにするのは難しいのだとか。

愛山は有名な日本酒である「十四代」でも使われており、個人的な感想としては確かに十四代に近しい味で、ここまでの日本酒の中でもっとも「スタンダードな高級酒」という印象。

ちなみにボトルのラベルはもともと十四代のものだが、もう使わないからといって譲り受けたそう。そんなことあるのか(写真は撮り忘れ)​

サワラのミキュイ、新じゃが芋と青のりのフォンダン。​大変美味しい!!​ミキュイ(=半生調理)の絶妙な生っぽさがある火入れ、しっとりさ、旨味、味わい。最高です。いややっぱ日本が魚は最高だな。

愛山のジューシーさにもベストマッチ。ワインでいえばアルザスのゲヴェルツトラミネールとかかなあ。

5杯目はいよいよ「志荘 YK-18」。こちらは本イベントの開催元であるインタートワインのために作られた、こちらでしか購入できない専用キュヴェ。今回いただいた他のお酒は2000-5000円と(ワインと比べると)お手頃な価格だったが、こちらの志荘は3.3万円とかなりの高級酒。

もともと澄川氏は「居酒屋の酒でありたい」という哲学で、高級酒の制作には消極的だったところ、大橋MWの働きかけもあり、特別に醸造することにしたのだとか。大橋MW曰く「次から次へと三つ星店に決まってしまった」と語られており、東京の高級レストランで現在ペアリングに使われている一本だそう。

やや熟成した香り、複雑性、Earthy(=土っぽい)なニュアンスがありつつ、東洋美人らしく「水」のような透明感が共存している。めちゃくちゃレベルが高い。

ちなみに「YK-18」とはおそらく​「Y=山田錦、K=熊本酵母(きょうかい9号)、18=精米歩合18%」​の意味合い。日本酒の世界には「​YK-35​」という有名な業界符牒があり、これは全国新酒鑑評会で金賞を取るための定石スペックとして長年語られてきた組み合わせ。「YK-18」は、このYK-35をさらに極限まで磨いたスペックを意味していそう。精米歩合が全てとは思わないのだが、確かに貴重だし大変に美味しい。

参加者からの「全国新酒鑑評会ってどういう捉え方をして出してます?」という質問について、澄川さんは「全ての世界中のコンテストで一番権威がある」と回答。IWCの議長を務める大橋MWも「IWCはフリー演技のようなもので、誰が見ても違いがわかるが、鑑評会に出てくる酒は違いがわからない。それほど全ての酒が精密」とのこと。鑑評会のことはあまり知らなかったのだが勉強になった。

ちなみに澄川さん、​「日本酒はロマンで作るべきではないし、ロマンは消費者に語るものではない(味で語るべき)」「技術力の欠如を個性と言ってはいけない。一定の技術レベルを伴ってから個性を語るべき」​(意訳)など、痺れる台詞をしばしば発していました。めちゃくちゃ分かるなあ。

「志荘」の名前の由来も​「志さえあれば何でも乗り越えられる」​という意味の吉田松陰の名言から来ており、日本酒の回に参加すると毎回感じることなのだが、表現や経営、人生に通ずる話が多い。​

フヌイユの香りフランス産アニョーのロティ、アンチョビのヌイユ、春野菜のラグー。

アニョーとは乳飲み仔羊のことで、牧草を食べず、母乳のみで育った生後数週間の仔羊のこと。非常にミルキーで淡白、最高級品とされており、最近はMaison Lameloiseでも食べたな。フランスの春の旬の食材。

​肉が甘くてめちゃくちゃに美味しい…!!!​皮の部分が最高。Maison Lameloiseの子羊よりもジューシーであり、正直こちらの方が好き。これに志荘を合わせると、ブルゴーニュのピノノワールを合わせたような複雑性と軽やかさ。いや〜美味しい。飲み疲れないのも良いね。

デザートは苺のタルタル、甘酒と塩麹。キウイと抹茶のギモーブ。

今回も良い会でした。「稲をくぐり抜けた水」の言葉の通り、良い意味で水そのままの透明感がありつつ、しかしフルーティーで旨味甘味のある食事に合うスタイルが心に刻まれました。

やっぱり蔵元の話を聞きつつ集中して飲むと解像度が上がるな。今年はWSET Sakeも受講予定であり、ワインだけでなく日本酒の世界も解像度を上げていくのを頑張ります。

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Katsuma Narisawa

Software engineer and photographer exploring the intersection of technology and human experience.

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